約 730,148 件
https://w.atwiki.jp/shinkiss_matome/pages/2236.html
ウサギのナミダ・番外編 少女と神姫と初恋と その4 ◆ 金曜日の放課後のことだ。 ノーザンクロスのバトルロンドコーナーで、美緒たち四人と安藤は対戦にいそしんでいる。 オルフェはまだ実戦というレベルでの対戦をしていない。 LAシスターズの神姫たちを相手に、いろいろと試している段階だ。 対戦用筐体を一台占拠しているが、常連たちは何も言わなかった。 LAシスターズはここでは顔が通っているし、話題の神姫・アルトレーネ・タイプの動きがじっくり見られるとあって、好きなようにさせていた。 そんな状況をありがたく思いながら、安藤とオルフェの戦い方について話している。 そのとき。 「よう、安藤。女にバトロン教わってるなんて、ずいぶん情けねーな」 「蜂須……」 筐体から顔を上げると、酷薄そうな笑みを浮かべた小男が、三人ほどの取り巻きを連れて立っていた。 その小男は蜂須英夫。ここ『ノーザンクロス』で『三強』の一人といわれる人物で、美緒たちと同じ高校の同級生でもある。 「お前に神姫のこと聞いても、教えてくれなかったじゃないか」 「……だいたい八重樫。オレの誘いを断っておきながら、なんでこんな男に付いてんだよ」 蜂須は安藤を無視して、美緒に視線を向けた。 美緒は身をすくめる。蜂須の視線はいつも、美緒の全身にからみつくように感じられた。 「そ、その話は……何度も断ったでしょう」 「何が不服だってんだよ。お前だって、バトロン強くなりてーんだろ。だったら、そんな初心者のお守りは他の連中に任せて、オレのチームに入れよ」 美緒は身を縮めて、蜂須の視線に耐える。 はっきり言って、美緒は蜂須が嫌いだった。 彼の、人を見下した態度が、どうしても好きになれない。 それに、あのとき。あの雑誌にティアの写真が載ったときだって、それをネタに大声でいやらしく笑っていた男なのだ。 好きになれるはずがない。 有紀が美緒の前に立ち、蜂須の視線を遮った。 「おい。美緒は断ったって言ってんだろ。しつこい男は嫌われるぞ」 「てめーとは話してねぇんだよ、このデカ女」 「んだと、このバカハチ!」 怒りを露わにした有紀を蜂須はせせら笑った。 「なんだよ、殴るのか? 殴るのかよ? バトロンじゃオレにかなわないからって、暴力に訴えるわけだ。 はははっ、まったくサイテーの女だよなあ!」 「くっ……」 有紀は拳を強く握り、震えを止めようとした。 蜂須の言うことは本当だ。 『玉虫色のエスパディア』とは、四人とも何度も対戦しているが、勝てた試しがなかった。 「強くなりてぇんなら、そんなオママゴトみたいな対戦してねぇで、オレのチーム『レインボー・ブレイカーズ』に来いよ。手取り足取り教えてやるからよぉ……」 蜂須は美緒をなめ回すように見ながら、舌なめずりした。 だが、 「うわ、厨臭いチーム名!」 の声に、視線を逸らさざるを得なくなる。 睨みつけたその先には、両手で口を押さえた梨々香がいた。 「江崎ぃ……バトルもまともにできねぇくせに、人のチームにケチ付けてるんじゃねーよ」 蜂須はここぞとばかりに、嫌みったらしい言葉を吐き出した。 「だいたい、見るに耐えねーんだよ。まともにバトルもできねー女どもが、キャッキャウフフとゲーセンでつるんでるのは。 ここはバトルで上にのし上がろうって野望がある連中のコロシアムなんだ。 いつまでもヌルいバトルしてたり、イロモノに走ったり、非武装派なんざお呼びじゃねーんだよ。 それとも何か。おまえら、武装神姫ネタにして、男漁りに来てんじゃねーのか?」 「てめっ……!」 さすがに頭にきた有紀だったが、涼子に腕を押さえられた。 暴力沙汰にするわけにもいかない。 有紀は憎悪すらこもった視線で、蜂須を睨みつけた。 「何怒ってんだよ。本当のことだろ。 お前たちのリーダーは、オレの誘いを断っておきながら、そんな初心者くわえ込んでやがるんだからよ」 「やめて……! もうやめてよ……」 美緒は悲痛な声で、蜂須の言葉を遮った。 これ以上は聞くに耐えない。 美緒は勇気を振り絞って、蜂須を見た。 視線が合う。 蜂須はニヤニヤといやらしく笑いながら、美緒に言う。 「やめてほしけりゃ、オレたちの仲間になれよ。そしたら、こんな連中、無視してやるからよ」 背後にいたチームメイトたちも低く笑い声を立てる。 その小さな笑い声さえもおぞましい。 美緒は思わず腕を抱いてうつむいた。 そのとき。 「おい、そのへんでやめとけよ」 そう言って、レインボー・ブレイカーズの笑いを止めたのは、安藤だった。 蜂須は眉を逆立てて、突っかかる。 「なんだよ、てめぇは関係ねーだろ」 「あるよ。彼女たちに俺の方からコーチを頼んだんだ。 俺を教えていて悪く言われるんなら、オレのせいだ。 それで彼女たちを侮辱されて、黙って聞いてられない」 「はっ……新型連れてるからって、調子こいてんじゃねーぞ、安藤。ここはゲームセンターだ。学校みたいにうまく行くと思ってたら、大間違いだぜ?」 「学校もゲーセンもあるもんか。女の子を侮辱して困らせたりして……それは人としてどうかって問題だろ?」 蜂須は安藤を睨みつけた。 その視線には殺意すらこもっているような気がする。 だが、安藤は一歩も引かず、その視線を受け止めた。 「だったら、バトロンで勝負だ」 「なに?」 「ここで言いたいことがあるなら、オレをバトルで負かしてみろよ。そしたら、お前の言うことに聞く耳もってやる」 「……俺が勝ったら、彼女たちにもうまとわりつかないって約束できるか?」 「ふん……賭けバトルってことか? いいだろ。そのかわり、オレが勝ったら、八重樫にはレインボー・ブレイカーズに入ってもらう」 その言葉に、安藤も思わず言葉を詰まらせた。 涼子が蜂須に言う。 「そんなの、無理に決まってるでしょう! 安藤のオルフェは、まだ起動して一週間なのよ!?」 「何言ってんだ、バーカ。先に言い出したのはそっちだろ」 「だからって、美緒の意志も聞かないで、そんなこと言い出すのはおかしいでしょう!」 さすがの涼子も大きな声を上げた。 しかし、蜂須は余裕の笑いを浮かべている。 「別に俺はバトルしなくたっていいんだぜ? そっちから言いだしたことなんだからな。 まあでも、念のため聞いてやるか。八重樫はどうだよ。この条件でオレと安藤のバトル受けるか?」 涼子はうつむいている美緒を見た。 彼女は蜂須の視線に耐えているようにも見える。 一瞬の間の後、美緒は絞り出すように言った。 「……いいわ」 「美緒!?」 涼子の声は悲鳴に近かった。 蜂須の後ろにいた誰かが、ヒュウ、と口笛を吹く。 「そのかわり、勝負は一週間後」 「なに?」 「まだちゃんとバトルもしたことのないオルフェに、あなたのクインビーが勝つなんて当たり前でしょう。……三強を名乗るなら、そのくらいの余裕を見せて」 「ふん……まあ、いいだろ」 クインビーは、蜂須の神姫であるエスパディア・タイプの名前である。 「それから、あなたが勝っても負けても、わたしたちと、わたしたちに関わる人たちを決して侮辱しないって約束して」 「いいとも……お前がチームに入れば、こいつらと関わる必要もないしな」 蜂須は鼻を鳴らして美緒を見る。 顔を上げた美緒は、今にも泣き出しそうな顔をして、蜂須を睨んでいる。 そう、この顔だ、と蜂須は思う。 嗜虐心をそそる美緒の顔が、蜂須はたまらなく気に入っていた。もっと泣かせてやりたい、悲鳴さえ上げさせたい。 その想いが、彼の嗜虐心をさらに煽る。 蜂須は、さらにいやらしく笑って、こう言った。 「八重樫に免じて、ハンデをやるよ。条件次第で、オレのクインビーをエスパディアのノーマル装備で戦わせてもいい」 「……条件?」 「八重樫が一日、オレに付き合うと約束できるならな」 蜂須が舌なめずりする。 これにはついに有紀が切れた。 「調子こいてんじゃねぇ! このエロチビ!! ずっと美緒にフられてきた憂さ晴らしのつもりかよ!」 「お呼びじゃねえんだよ、デカブツ。オレは八重樫と話してんだよ」 「ふざけんな! お前に付き合ったら、どんな目に遭うか分かったもんじゃ……」 激昂している有紀の腕に誰かがそっと触れた。 言葉を切り、その誰かを見る。 美緒だ。 彼女は泣きそうな顔をしながら、それでも言葉を絞り出した。 「……その条件を呑めば、ノーマル装備で対戦……絶対ね?」 「ああ。いいハンデだろ。どうよ?」 「……わかったわ」 「ちょ……美緒!!」 振り向きながら有紀は美緒をとがめる。 しかし、美緒の瞳には決意の色が宿っていた。 有紀はそれ以上何も言えず、腕の力を抜いた。 レインボー・ブレイカーズのメンバーのいやらしい笑いをバックに、 「ようし、決まりだ。一週間後、楽しみにしてるぜ、安藤。あーっはっはっは!」 蜂須はひときわ高く笑って、その場から立ち去った。 チームのメンバーもそれに続く。 LAシスターズは何も言えず、ただ彼らの背中を見送るばかりだった。 ◆ 蜂須英夫にしてみれば、安藤智哉は目の上のたんこぶだった。 蜂須は決して人気者ではない。むしろ学校では嫌われ者である。 それは彼の性格に因るところが大きい。 誰に対しても見下したような態度をとり、えらそうなのだ。特に成績がいいわけでも、スポーツができるわけでもないのに、である。 特に自分よりも立場の弱い者に対して態度が大きい。気の弱い男子生徒を顎でこき使っている。 女子に対しては、全員が自分の使用人と思っているのではないか。 背が低く、つり目で卑屈そうな顔立ちがいやらしい、と女子の間では噂され、評判はすこぶる悪い。 もちろん、そんな男が男子からも好かれるはずがなかった。 だが、ゲームセンターでは蜂須の天下だ。 ノーザンクロスでは三強の一角として君臨している。 『玉虫色のエスパディア』は、彼の神姫のファイトスタイルを揶揄した呼び名なのだが、蜂須は気にしていない。 蜂須は、実はとある中小企業の社長の息子で、小金持ちである。 その潤沢な資金を利用して、装備を買い込み、バトルロンドでふんだんに投入する。 何の装備で対戦するのか読めない、毎回サイドボードの中身が違う、だから対策も立てようがなく戦いにくい。 そして対戦相手を圧倒するバトルを展開する。 一定しない装備を『玉虫色』と揶揄しているのだった。 蜂須に言わせれば、そんなのは負け犬の遠吠えに過ぎない。 勝てないのは弱いからで、勝てる自分が強いのだ。 勝ちたければ、強い装備でも何でも持ってくればいい。 所詮、負けたヤツのいいわけに過ぎないのだ。 その点、負けても言い訳せず、自分と同程度の実力を持つ、三強の残り二人には一目置いている。 そんな調子であるから、ゲームセンターでも蜂須に好意を持つ者は多くない。 だが、装備に頼っているだけで三強の一角になれるほど、バトルロンドは甘くない。 ノーザンクロスの常連は誰しも、『玉虫色』の実力を認めている。 彼を認めたプレイヤーや、彼の装備の知識の深さに感心する者、気の合う友人たちが蜂須の仲間になっていた。 ゲームセンターは蜂須にとっての城と言っていい。 だがそこに、ヤツはやってきた。 学校でも人気者で通っている、蜂須が嫌いなあの男。 安藤智哉である。 安藤は学校の男子にも女子にも人気がある。 自分と何が違って、こうも人気の差があるのかさっぱり分からない。 だが、蜂須とて、自分とは接点のない男のことで愚痴を垂れるほど暇ではない。 蜂須にとって安藤を敵視せざるを得ない事態が起きたのだ。 理由の一つは、安藤が武装神姫を始めたこと。それも神姫がアルトレーネというのも気にくわない。 そしてもう一つの理由は、美緒が安藤を気にかけ、ゲーセンでそばにいるからだった。 蜂須は以前から、美緒に横恋慕していた。 ◆ 「美緒! なんであんなバカげた条件呑んだんだよ!」 「安藤も、なんであんなヤツに勝負ふっかけたりしたの。無茶もいいところよ」 ファミレスの六人席。 向かいに座る有紀と涼子に責め立てられて、美緒と安藤は並んで座ったまま、二人同時にしゅんとした。 「だってさ……あいつの言ってることがどうにも許せなくて……」 ぼそっと話した安藤を、涼子は激しく睨みつけた。 「今のあんたが、蜂須に勝てるわけないでしょうが!」 「……さっきから思ってたんだけど、蜂須ってそんなに強いのか?」 「あんたねえ……バトルロンドをなめるんじゃないわよ。 今の安藤と蜂須じゃ、合気道を習いに来て一週間の小学生と、道場で三番目に強い有段者くらい差があるわ。それで勝てると思う!?」 「……」 安藤はうつむいたまま押し黙った。 今度は有紀が口を開く。 「だいたい、美緒も美緒だ。なんであんなヤツの言うこと聞いてんだよ。あいつがアンタにずーっと横恋慕してることくらい、よくわかってんだろーが」 「……もう嫌だったの」 「なにが」 「嫌だったの。蜂須くんが、みんなのことを悪し様に言うのがもう耐えられなかったの! もうずっと……ティアや遠野さん、エトランゼさんたちのことを口汚く言ってるのが、聞くに耐えなかったの!」 「だからって、あんな条件呑むことねーだろが! アンディが負けて、あいつに一日付き合ったりしたら、何されるかわかんねーぞ!」 有紀は以前、蜂須とその取り巻きの会話を耳にしたことがある。 本人の前ではさすがに口にしないようだが、それでも大きな声で話していたから、嫌でも聞こえた。 つまり、蜂須は美緒の身体が目当てなのだ。あのグラビアアイドル顔負けの身体を弄び、あの美貌を羞恥に染め、泣き声を聞きたい。 そんなことを大声で言い放つ男なのだ。 最低の野郎だ。 有紀は心から美緒の心配をしていた。だからこそ、語気もつい荒くなってしまう。 「だって……ハンデがつくから……」 「はあ?」 「エスパディアのノーマル装備なら……安藤くんの……オルフェの勝率が少しは上がるでしょ……?」 うつむいた美緒から発せられた言葉に、有紀は深くため息を付いた。 美緒はLAシスターズきっての頭脳派プレイヤーだ。 だが、今回の判断はどうにもずれている。 美緒は感情に流されると、たまにこうした突拍子もない行動に出ることがあった。 それが今回でなくてもいいのに……と思っているのは有紀だけではないはずだった。 しばらくそこで話を続けたが、結局有効な案は浮かばなかった。 圧倒的実力差を覆す方法なんて、そうあるはずがない。 誰もが絶望的な思いで口を閉ざした、その時。 いままで黙っていた梨々香が口を開いた。 「それじゃあ……相談してみたら?」 「え? 誰に?」 「涼子ちゃんのお師匠さん」 そう言って、梨々香はストローに口を付ける。 彼女の澄まし顔を見つめながら、安藤は首を傾げた。 ◆ 「浅はかだな」 その一言で、彼女たちの相談は一刀両断に処せられた。 翌日土曜日の『ノーザンクロス』でのことだ。 遠野貴樹は、蓼科涼子にとって武装神姫の師匠である。遠野本人はそう思っていないようだが。 その遠野は、口をへの字に曲げ、いかにも機嫌が悪そうだった。 LAシスターズの四人は、その一言だけで恐縮しきってしまっている。 「浅はかって……」 かろうじて反論しようとした安藤の言葉を、遠野は遮った。 「そのとおりの意味だ。安藤くんと言ったか……君が玉虫色と賭けバトルををしようだなんて、無謀としか言いようがない。八重樫さんが不利な条件を受諾したのも間違っているし、蓼科さんたちがそれを止められなかったのも甘すぎる。 そもそも、バトルロンドにそういう賭を持ち込むこと自体、どうかしてる。自業自得、同情の余地もない」 遠野の言葉にはとりつく島もない。 だが、身を乗り出して助け船を出したのは、遠野の隣にいた二人だった。 「大丈夫! もしゲームに負けても、次にわたしが蹴散らしてやるわ!」 「聞き分けなかったら、俺に任せろ! ぶっ飛ばしてやるぜ!」 そう言って腕をまくってみせる菜々子と大城を、遠野は睨みつけた。 「君らがそんなことしてもその場しのぎにしかならない。意味ないだろ」 やはり一刀両断され、二人はしゅんと肩をすくめた。 今日の遠野は容赦がなかった。 それでも安藤は食い下がった。 「そ、それでも……ヤツに勝つ方法は……」 「ない」 「ないって……」 「バトルロンドを甘くみるな、安藤くん。 玉虫色だって伊達に三強を名乗っているわけじゃない。バトルロンド始めて二週間の初心者相手なら、一分とかからないだろう。 いいか。バトルロンドはただの対戦ゲームじゃない。 神姫の性能はもとより、その神姫の特性、性格を把握し、適正な装備と戦略を与える。相手の神姫の性能と戦略を試合の早い段階で解析し、自分の神姫でどう対応するか判断し、作戦を立て、指示を出す。 神姫の性能だけでも、マスターの戦略だけでも勝つことはできない。 すべての要素が噛み合って、はじめて勝利を手にすることができる」 意外にも熱っぽく語りはじめた遠野を、安藤は驚きながらも見つめていた。 目が真剣だった。 「それを可能にするのは、神姫とマスターの信頼だ。 君のオルフェは、起動してまだ一週間。すべての要素で玉虫色に劣る。それでどうやってヤツに勝つ? 無理だ」 「でも、マスターは間違ってません! 八重樫さんを、シスターズのみなさんを侮辱されて、何も言わないマスターなら、わたしはきっと軽蔑しています。 大切な者を守ろうとしたマスターを、わたしは尊敬しています! マスターへの信頼は、『玉虫色のエスパディア』に負けません!」 口を挟んだのはオルフェだった。 しかし、遠野は表情を変えずにオルフェを睨む。 「それで勝算があるならいい。だが、勝算もないのに、こんな条件で賭け試合に乗るなんて、愚かな蛮勇にすぎない」 「だったら、どうすればいいって言うんですか!?」 「謝ればいい」 遠野の一言に、その場にいた全員が顔を上げた。 「こんな試合は無謀でした、今回の試合はなしにしてください、と言って、謝ればいい。向こうも何か条件を付けてくるかも知れないが、そこは交渉次第だ。少なくとも、負けたときよりも状況が悪化することはない」 「た、戦う前から白旗揚げろって言うんですか……!?」 「それ以外に何がある。それができないのは、君たちのなけなしのプライドが邪魔をしているだけだ」 安藤は唇を噛んで、うつむいた。 遠野の言うことはもっともだった。 勝算がない限り、戦わないか、戦って負けるか、いずれかの選択でしかない。 しかし、感情が納得できない。 蜂須にあそこまで言われて、引き下がることはできなかった、あのときは。 安藤だけではなく、LAシスターズの四人もうつむいて、やはり悔しそうな顔をしていた。 ティアはみんなを見渡したあと、胸ポケットから自分のマスターの顔を見た。 相変わらずへの字口で、むっつりと押し黙っている。 しばしの沈黙。 ティアはマスターに何か言うべきだろうか、と考え、口を開こうとしたそのときだった。 「よお、安藤。みんなで来週末の作戦会議か?」 こんな普通の言葉でも、嫌みったらしく聞こえてしまうのは、本人の日頃の行いのせいか。 「蜂須……」 「結局、勝ち目がないことに気づいて、陸戦トリオに相談かよ。 は、みっともねえなぁ。 せいぜい、ない知恵絞って相談してろよ」 安藤も美緒たちも、反論できずにいる。 そして、蜂須は瞳に好色そうな色を浮かべ、 「八重樫、ちゃんと身体を磨いておけよ」 あーっはっは、と高笑いを残して去っていった。 これには菜々子も大城も色めき立った。 「なっ……あんなの、セクハラじゃない!!」 「みんなの前であんなこと言うなんて……サイテーな野郎だ!」 美緒は両腕を抱き、うつむいていて、表情は見えない。 だが、ティアは見た。 彼女の肩が小さく震えているのを。 と、そのとき。 ティアの背後の気配が変わった。 彼女の主の顔を見上げる。 いつもと変わらない、仏頂面。 だが、この雰囲気の激変は、いつもそばにいるティアだからこそ感じ取れたのかも知れない。 ティアのマスターは怒っていた。さっき、安藤をしかっていたときの比ではない。彼女にはそう感じられた。 遠野は壁から背を離すと、みんなに向かって言った。 「場所を変えるぞ。ファミレスに集合だ」 「え? な、なんで……?」 「気が変わった。……ヤツに勝つ方法、聞きたくないか」 安藤は目を白黒させて立ち尽くす。 大城はにやりと笑い、安藤の背中をたたく。 菜々子は苦笑を浮かべながら、シスターズに一緒に来るよう促した。 ティアは安藤の肩に乗っているオルフェを見る。 彼女もマスター同様、目を白黒させていた。 目が合う。 オルフェは困ったように小首を傾げた。 ティアは小さく微笑んで、頷いて見せた。 そう、きっと大丈夫。 ティアのマスターはこういう時、とても頼りになるのだから。 続く> Topに戻る>
https://w.atwiki.jp/bakiss/pages/567.html
時代に真っ向から逆行したような服装だった。悪名高い漆黒の軍装。グルマルキンと名乗った女性は、武装親衛隊の勤務服に外套を羽織 り、淡い金髪に軍帽をかぶっていた。他の二名もまた同様に、髑髏の結社の装いだ。 ティーン――同じく武装親衛隊の勤務服に、軍帽を目深に被り、腰に日本刀を佩いている。 巨躯――同じく武装親衛隊の勤務服に、無骨な鉄兜を被り、無機質な双眸が不気味に光る仮面をつけている。 優は銃口を向けていた。――腕章に刻まれたハーケンクロイツ。遺産を狙うのは、生者だけではない。過去からの亡霊もまた、その怨念を 晴らさんがために、力を求める。WWⅡの敗残兵。鉤十字の亡者達。 「ネオナチ、か」 「馬鹿なことを口にするな。我々はあんな半端ものではない。あの三千世界を焼く嵐を経験したことのない者たちなど、仲間といえるか。 日々を悪戯に過ごし力を磨耗していった馬鹿どもではなく、我々は絶えず研鑽を続けてきた。故に我々は正当なる第三帝国軍人であり、ゲル マンの騎士だ」 陶酔を若干滲ませながら、グルマルキンと名乗った女性はしゃべる。その言葉を信じるなら、彼女は戦中から従軍していたことになる。そ の顔にはいささかの皺もなく、半世紀の老いが刻まれた様子はない。不老不死――魔術を極めたものが辿り着く極地。 ――ただの人間ではない。彼女を中心に巻き起こる瘴気が、周囲の空間を侵し始めていた。魔女という存在は、そこにいるだけで周囲を異 界へと変える。ちりちりと緊張が優の首筋を焼いた。 「そこをどいてもらおうか、スプリガン。聖槍は我ら帝国の所有物だ。総統閣下の所有物だ。正当な持ち主の下に返すのが礼儀というもので ないかね?」グルマルキンが口をひらく。 「へっ、何が正当な持ち主だよ。あんたらの手に渡ったら、第三次世界大戦が起こりかねないぜ」 「そうか。あくまで我らの邪魔をするというのだな。……ならば」 優の言葉を予想していたように嗤い――グルマルキンは部下に命令を発した。 「ドライ、そいつを潰せ!」 熊のような巨躯がぶぅんと電子音のような唸りを上げ、優に突進した。自身の巨大な質量を頼みにした単純な攻撃だが、それゆえ破るのは 難しい。優は惨殺された死体の様を思い出していた。力任せに引きちぎられた肉体――その想像を絶する力は、容易く優の体を木っ端微塵に 四散させるだろう。眼前に迫りくる巨大な弾丸の如き敵を前に、優はどうしたか。 ただにやりと笑い――まともにその突撃を受けた。なんと正面からドライを圧し留めているのである。鍛えているとはいえその肉体は人間 の域を出ていない優だ。人間を紙細工のように潰すドライにまともに抵抗できるはずがない。ならば何故、突撃を受け止めることができたの か。その種は、優が着込んでいるスーツである。 不自然なことが起こっていた。ドライの巨躯を受け止めている優の筋肉が、目に見えて増えているのである。腕は丸太ほどに膨れ上がり、 胸もまた鎧のようにあつい筋肉がついていた。 AMスーツ。それは人口筋肉によって使用者の身体を格段に強化し、人外の膂力を約束する特殊スーツである。だがAMスーツの恩恵を預 かってもドライの怪力は恐るべきものだった。徐々にだが優を押しつつある。純粋な力くらべなら、ドライに分があるようだ。だが力だけで 勝敗が決するわけではない。優がスプリガンである所以はAMスーツだけではない。 優は隙を突き、その尋常ならざる膂力でドライの足を払い、すかさずその腕を取った。大の大人が子供に背負い投げられるような形となる。 「どおりゃぁぁぁぁぁああああ!!!」 姿勢を崩されたドライは、その力の流れを優にコントロールされ、自慢の怪力を生かせぬまま頭から地面に激突した。顔を地面にめり込ま せ、伏したまま動く気配はない。優はぱんぱんと手を払った。にやっと笑いながら優はグルマルキンに向き直った。 「たいそうな口を利くが、スプリガンを相手にするにはまだまだだったようだな。もう半世紀ぐらい準備が足りなかったんじゃないのか?」 「減らず口を……。ふん、だがあのドライを屈服させたことは褒めてやろう。なるほど力任せでは歯が立たぬようだな。だが我々の目的は貴 様らの抹殺ではない。聖槍――それさえ手に入れれば十分なのだ。貴様らにかまっている暇はないのだ」 「へ、じゃあ、嫌でもかまってもらうぜ!」 ナイフを手に、優は疾走した。AMスーツの加護を受け、人間の目には捉えきれないほどの速度だ。魔女といえども魔術を行使する前は普 通の人間と変わらない。その弱点を補うために数々の術式や策を準備するのだが、不意をつかれればあっけなく死ぬ。優の狙いは詠唱が行わ れる前にその命を絶つことにあった。 そしてオリハルコン製ナイフの切っ先が魔女の頚動脈をとらえ―― 「な!」 横合いからの一刀に、阻まれた。 魔女の命を絶つはずだったナイフは、美しい刃紋を持つ日本刀にさえぎられ、首筋に届くか届かないかぎりぎりのところでじっと動けずに いた。すぐ横を見れば――いつの間に移動したのか、魔女のすぐ傍に抜刀した武装SSが控えていた。 「そうそう簡単に殺されはせんよ」魔女の嘲り。 「……!」 すぐ傍まで死の刃が迫っているのに、魔女はまったく動揺していなかった。魔女に限らず魔術師は、非力な自分を補助するために使い魔や 人形などのガーディアンを使役する。この場合、この武装SSがグルマルキンにとってのガーディアンなのだろう。スプリガンに拮抗しうる ほどの力量を持つなら、魔女の絶対の信頼もうなずける。 「……くく、よくやったアイン。さて、状況は我らの方に傾いてきたようだな」 そういって、懐から取り出したルガーを優のこめかみに押し付けた。スプリガン相手でもこの近距離なら外しようがない。加えて、このア インと呼ばれた武装SSの存在。少しでも抵抗のそぶりを見せれば即座に優の首が飛ぶ。 状況は圧倒的に優に不利だった。だがグルマルキンはルガーをさげ、サーベルを鞘に収めた。 「残念だが、貴様の始末よりも聖槍を手に入れるのが先だ。アイン、こいつはお前が足止めをしろ。久しぶりの獲物だ、じっくり味わえ」 アインは、無表情にこくりとうなずいた。それと同時に沈黙していたはずのドライが起き上がった。先ほどの背負い投げのダメージはまっ たく残っていないようだった。ぶぅんと機械音のような唸りを上げ、ロンギヌスが眠る地下への入り口へ向かうグルマルキンに付き従った。 「待ちやがれ!」 グルマルキンを追うのをさえぎるように、アインが優の前に立った。緩やかに構えているようで、その実まったく隙を見せない立ち振る舞 い。死人を思わせる白い肌。薄く閉じられた唇。そして、腰に佩いた日本刀。ゆっくりと腰を落とし、柄に手をかける。居合いの構え。 その途端、無風であるはずの両者の間に突然ざわっと風が吹いた。じわりと優の首筋に嫌な汗が滲む。鋭く研ぎ澄まされた純粋な殺意が目 の前の武装SSから放射され、優の心臓を貫いていた。少しでも隙を見せれば、殺される。優を戦慄させるには十分な濃度の殺意だった。ナ イフを逆手に変えながら、頭の片隅で優は思った。――ティアの助けにはいけそうにない、と。 存外長い距離を歩いた先、石畳の広い空間の中心に、ロンギヌスは安置されていた。聖槍の周囲に人影はない。あまりの警備のずさんさに グルマルキンは拍子抜けしていた。だがこれで作戦も楽に遂げることができる。さっそく彼女はロンギヌスに手を伸ばそうとして―― 「む!」 右手に奔った鋭い痛みに、拒絶された。とっさに手を離す。見れば、右手の手袋が焼け焦げていた。 「結界か」 忌々しげに不可視の障壁を睨む。ロンギヌスは絶大な奇跡を呼ぶ聖遺物だ。守護のための結界が一つや二つ張られていても不思議ではな い。だがあと少しで目的のものを手に入れられる時に、無粋な邪魔をされたのが、魔女にとってとても不愉快だった。 サーベルを抜き放ち、無造作に切りつける。同時に刀身に刻まれた"解呪"のルーンが発動し、ロンギヌスを守っていた術式をキャンセルし た。だが結界を破っても、まだグルマルキンの警戒は解かれなかった。魔力が織り込まれた手袋が焼け焦げたということは、よほどの術者が はった結界に違いなかった。そしてその独特な術式には見覚えがあった。その記憶はグルマルキンの深い恥辱の傷を抉るものだった。忌まわ しい宿敵がここにいる! 「あら、誰かと思えばミス・グルマルキン。お久しぶりね」 「貴様……ティア・フラットか!」 グルマルキンの灼熱の如き怒りを、氷の微笑が受け流した。ティア・フラット。彼女は万が一の事態のために、ロンギヌスの間近に控えて いたのだ。そしてその懸念は的中した。ティアは外の状況を使い魔を介して把握している。 グルマルキンの怒りに燃えた視線を、ティアは真っ向から受け止めた。両者の間には、何か宿命めいた因縁が存在しているかのようだっ た。激情に駆られた鉤十字の魔女は止らない。あふれ出る憎悪を隠そうともせず、氷の魔女に牙を剥いた。 「このときを待ち望んだ……! 私に敗北を刻み付けたお前を、この手で縊り殺す瞬間を何度も夢見てきたのだ。今日ここで、貴様との因縁 も仕舞いにしてやる!」 詠唱が魔女の口から流れ、サーベルが燐光を放ち始めると、その刀身からルーンの刻印が浮き上がった。大気中のオドを吸収し、グルマル キンを中心にして力場を作り上げる。そして限界まで膨れ上がった魔力が、一気に爆発した。そして爆発とともに魔力は収束し指向性のある 現象へと変わる。槍の形に鍛え上げられた魔力の塊がグルマルキンの周囲に浮かんでいた。その一つ一つにはかするだけで肉体が爆ぜるほど の力が秘められている。そしてグルマルキンの合図とともに、幾重にも張り巡らされた魔術の弾幕が、ティアに襲い掛かった。 魔術の槍が石畳の床に何本も突き刺さる。その様子はさながら突然いくつもの墓標が出現したようだ。精密な狙いなどない、大雑把な射 撃。だが数が数だったので、その槍の暴雨は逃げ遅れたティアを串刺しにしていた。途端に、槍が一斉に魔力を解き放ち、大爆発を起こし た。荒れ狂う破壊の渦。爆音が狭い室内に響き渡り、粉塵がグルマルキンの視界を奪った。 だがグルマルキンはティアを仕留めたとは思っていなかった。長き因縁を持つあの魔女が、こんなことで死ぬはずがない。そしてその予測 は当たっていた。 舞い上がる塵の合間から、百獣の王と猛禽のない混ぜになったような怪物が現れた。コーリング・ビースト。護符から幻想の獣を召喚す る、ティアが得意とする高等魔術だ。その牙と爪は彼女の敵を引き裂き、殺す。だがグルマルキンとて魔術の練達だ。高等魔術とはいえ、そ の対処方法は熟知している。 「コーリング・ビーストなどという児戯が、私に通用すると思うな!」 サーベルのルーンが魔女の肉と血と骨に染み渡りその全身を強化した。結果、擬似的に魔女は人間の枠を超える。強化された視神経が魔物 の動きを的確に追い、飛び掛った瞬間にその核を正確に貫いた。その瞬間、サーベルに施された"解呪"のルーンが起動。断末魔の悲鳴をあげ ることなく、幻想の獣は、穴が穿たれた護符を残して消えた。 「さすがね、グルマルキン」 少し離れたところに、自分の分身と獣を潰されたティアが涼しげな顔で佇んでいた。その美貌にはいささかの傷がない。 「苛烈なあなたにふさわしい魔術だったわ。もっとも、少し騒々しすぎるとは思うけどね」 「ぬかせ。しかし、まさか貴様と鉢合わせするとは思わなかったぞ。くく……何たる僥倖」 「そう。それで、どうやらあなたの狙いはロンギヌスというわけね。叶わない夢ばかり追い求めて、また人間に従属する道を選んだ」 「そのとおりだ。今も昔も、私はそれだけのために戦い続けている。総統の悲願を受け継ぎ、頑強な帝国を復興させるのが、私の望みだ」 「あなたは相変わらずのようね。残念だけど、あなたの望みを叶えてあげるわけにはいかないわ」 「ほざけ。それにな、本来なら即刻貴様の息の根を止めてやりたいところだが、そうもいってられないのだよ。聖槍の奪取はすべてにおいて 優先される。ドライ、私がこいつをひきつけている間に聖槍を奪え!」 命令を受け、漆黒の巨躯が聖槍に手を伸ばした。結界の守りはすでに存在しない。このままではロンギヌスはドライの手に渡る。しかしテ ィアは動じなかった。 「無駄よ。まだ結界は生きているわ。それも、もっと頑丈なものがね――」 ドライの指先がもう一歩のところまで迫った瞬間、聖槍を中心に紫電が荒れ狂い、聖域への侵入者を攻撃した。結界から発生した膨大な魔 力の渦がドライを飲み込み、その四肢を拘束し、ずたずたに切り裂いた。漆黒の軍装が破れ――その下から無惨な傷を負った鋼鉄の皮膚が覗 いた。ぱっくりと開いた傷口から血液の代わりに水銀が溢れ始める。 「自動機械人形(オートマタ)を連れてきたの?」 ドライの惨状を見たティアが呟いた。人の形をした人ならざるもの。瞳には宝石が輝き、血潮の変わりに水銀が全身を駆け巡り、脳の代わ りに円筒(シリンダ)が思考を司る。 「だけど、どのみち無駄ね。中心部は念入りに術式を施しておいたの。あなたといえども、その解呪は手間取るはずよ。あなたの部下には当 然無理。かわいそうだと思うなら、諦めるようにいってあげて」 「ククク、貴様はドライを甘く見すぎている。人形は決して主に逆らわない。あれは私は命令を必ずやり遂げる。たとえ腕がもげ足を潰され ようともな。――ドライ、私は命じたはずだ。さっさと聖槍を奪取しろ!」 完全に四肢を拘束されたはずのドライの身体に、グルマルキンの言葉によって、再び火がともった。機械仕掛けの体を、限界まで酷使す る。その全身に小さな火花が幾つもはじけた。だが構わず、力任せに不可視の枷を引きちぎった。ロンギヌスを覆っていた圧力が消え、結界 は役割を終えた。しかしあまりの負荷にとうとう腰の辺りで小爆発が起こり、ドライは力なく膝を突いた。満身創痍の有様だったが、なおも ドライは聖槍に手を伸ばす。とうとうその鋼鉄の指がロンギヌスに触れた。 「そんな、ただの力だけで、結界を破ったというの」驚きを隠せない表情で、ティアがいう。 「当てが外れたな、ティア・フラット。これで聖槍は我らのものだ。過去の雪辱を注ぎたいのは山々だが、ここで貴様に構っている暇はな い。我らには時間がないのだ。ドライ、作戦は終了だ。引き上げるぞ!」 やっとのことでロンギヌスを手にし、ぎこちない動きで立ち上がったドライの背中から、機械仕掛けの翼が出現した。背部に備え付けられ たジェットエンジンが火を放ち、巨躯を空中へと押し上げる。迫る地下室の天井を肩から発射したミサイルで粉砕し、同じく肩から出現した ドリルで穿孔しながら、ドライは暗闇の彼方に消えた。 「く……」 悔しげに唇をかむ。常に冷静に振舞っている彼女には珍しい。それゆえにグルマルキンの嗜虐に火をつけたのであろう。心底楽しそうにテ ィアを嘲笑っていた。 「貴様のその顔を見れただけでも満足だ。では、また会おう、ティア・フラット!」 「待ちなさい!」 再び、コーリング・ビースト。しかし、幻想の獣の爪に掛かる前に、グルマルキンの全身は霧のように掻き消えた。 「……逃がしたようね」 後にはティア・フラットだけが残された。 優とアインは動けずにいた。実力が拮抗するもの同士ならば、先に動いたほうが負けになる。どちらも攻めあぐねているのだ。目に見えな い心理の中で両者は激しくせめぎあっていた。だが唐突にその死闘は幕を下ろした。 『アイン、ロンギヌスは奪取した。引き上げだ』 魔女グルマルキンの声。周囲に優とアイン以外に人影はない。遠く離れたところから念話で語りかけているのだろう。ロンギヌスの奪取。 ティアが失敗したということか。 魔女の命を受けたアインは構えをといた。張り詰めた殺気が消滅すると同時に、その足元に魔法陣が展開された。光があふれ、小柄なアイ ンを飲み込んでいく。転移魔法陣だ。 「ちっ!」 その瞬間に優はナイフを投擲していた。だがそれはアインに突き刺さることなくその身体をすり抜けた。魔女の哄笑が響き渡る。 『残念だったな、スプリガン。貴様らのおかげで、我々の計画も次の段階へ進める。感謝するぞ。そして待つがいい。完全な復活を遂げた第 三帝国が、劣等どもを踏み潰し世界に君臨するときをな!』 その言葉を最後に、アインの姿と魔女の気配は消え去った。 「くそっ!」 悔しさに優は地面に拳をぶつけた。スプリガンの敗北だった。
https://w.atwiki.jp/shinkiss_matome/pages/2660.html
キズナのキセキ ACT1-22「異邦人はあきらめない」 ◆ 答案用紙の枚数をチェックしていた教師が、 「今日はここまでにしましょう」 教卓の上で紙の束を揃えながら、補習授業の終わりを告げた。 当番を任された生徒が「起立、礼」と号令をかける。 すると、教室内が一気に開放感で溢れた。 期末テスト後、成績不振者が集められた補習授業は、今日の再テストで終了である。 園田有紀と蓼科涼子は早々に荷物をまとめると、 「よし、急ぐぞ」 「うん」 足早に教室を出る。 しかし、出てすぐに、二人は呼び止められた。 「有紀、涼子。補習終わった?」 優しげに話しかけてきたのは、彼女たちのリーダー格の八重樫美緒。 その隣には、美緒の彼氏でチームメイトの安藤智哉と、もう一人のメンバー・江崎梨々香もいた。 有紀と涼子はみるみる鬼のような形相になり、三人を怒鳴りつけた。 「てめーらっ! 先に行っとけって言っただろ!」 「なんでここにいるのよ!?」 「え……だ、だって二人とも今日で補習終わりだって言ってたから、一緒に行こうかと思って待ってたのに……」 戸惑いながら言う美緒に、さらに二人はヒートアップする。 「アホか! あたしたちの補習よりも、菜々子さんの特訓のが大事だろが!!」 「もう仕上げの段階だって、遠野さんも言ってたでしょう!? こんなとこで油売ってる暇ないのよ!」 「ああ、こんなことしてる場合じゃねー。さっさと行くぞ、涼子」 「そうね、急ぎましょう」 二人は美緒たちを置き去りにして、小走りに昇降口へと向かう。 美緒たち三人も、あわてて後を追った。 期末試験前の週末が明けてから、有紀と涼子は態度が一変していた。 いつのまにか久住菜々子と和解し、特訓に積極的に協力するようになっていた。 その週末に何かあったことは確実だが、それが何なのかは、安藤も知らない。 遠野に訊いても何も言わないし、大城に訊いても、 「まあ、また遠野がやってくれたのさ」 とだけ言って、うやむやにする。 美緒は訳が分からず不満なようだが、大城の一言こそがすべてを物語っているように安藤には思えた。 あの日、安藤と大城に協力を求めた遠野は言ったのだ。奇跡が起きるところを見せる、と。 有紀と涼子が、菜々子と仲直りすることも、安藤からしてみれば、奇跡的な出来事だった。美緒たちがいくら諭しても気持ちを変えなかった二人が、こんなに短期間に態度をがらりと変えるなんて、奇跡としか思えない。 だが、それさえも、はじめから遠野の想定のうちだったに違いない。 これからいくつの奇跡をあの人は見せてくれるのだろうか。 それを遠野に言ったら、きっと、 「そんなのは奇跡でも何でもない」 そう言うに違いない。 いつものような仏頂面で。 その表情が頭に思い浮かんでしまい、安藤は思わず苦笑した。 ◆ 遠野のその一言は、久住頼子にとってかなり意外なものだった。 遙か彼方に飛んでいた記憶をたぐり寄せる。頼子さえすっかり忘れてしまっていたことだった。 「初期の頃から武装神姫をやってる頼子さんなら、持ってるかと思ったんですが」 「ええ……たぶん、物置にあるはずよ」 「よかった。しばらく貸していただけませんか?」 「いいけど……随分使っていないから、動くかどうかわからないわよ?」 「いえ、大丈夫です。メンテナンスしますし、出力が上がるように改造する予定なので……あ、もちろん、元に戻してお返しします」 律儀な遠野の物言いに、頼子は苦笑する。 「いいわよ、どうせ使ってなかったんだし、好きに使って。……菜々子の対戦に必要なんでしょう?」 「はい」 「だったら、遠慮しなくていいわ。あんな骨董品でよければ、いくらでも使って」 「恐れ入ります」 「それで、何本必要なの?」 「とりあえず、三本もあれば……」 頼子は、遠野と海藤を物置に案内した。 久住家の物置は、ちょっとした蔵レベルである。その大きさに遠野と海藤はちょっと驚いていた。 物置の中はほこり臭く、いろいろなものが所狭しと並んでいる。 「見てごらんよ、あのコレクションは相当なビンテージだぜ?」 海藤の言う方を見てみると、古い戸棚の中に、びっしりと箱が納められている。 何やら大判の辞書ほどの大きさのパッケージが占拠している棚もある。背表紙の文字は何かのタイトルのようだ。 「キング・オブ・ファイターズ」とか「餓狼伝説」、「ファイターズヒストリー・ダイナマイト」といったタイトルが読みとれる。 どうやら、大昔のゲームソフトのコレクションらしい、と遠野は見当をつけた。 遠野はあまりゲームに詳しくない。それらのタイトルから、ゲームの内容を類推することができなかった。 頼子は、物置の奥に足を踏み入れると、遠野の望みのものを引っ張り出した。 埃だらけではあるが、保管状況は悪くない。 「よし、早速作業に取りかかろう」 遠野の言葉に海藤は頷き、すぐに物置を出ていく。 二人が借り出したのは、頼子が武装神姫を始めてまもなく使っていたものだ。今はもう使っているマスターもほとんどいないだろう。最近武装神姫を始めたマスターは存在すら知らないかもしれない。 あんなものを何に使うのかしら? 頼子は首を傾げながら、物置の扉を閉めた。 ◆ すでに日が落ち、街灯が照らす暗い夜道を、尊と真那、梨々香が歩いている。 久住邸からの帰り道。 尊たちが久住邸に足を運んだのは二回目だが、今日も充実した対戦が楽しめた。多くの神姫マスターが通ってくるのも頷ける。 特に、日々追い続けている、神姫の違法パーツ……イリーガルマインドのことを全く考えずに対戦できるのが、尊にはありがたい。 「今日の対戦も楽しかった。収穫もあったしな、蒼貴」 「はい。今日対戦した、ティアのノールックショット……練習すれば、わたしにもできそうです」 肩に掛けたカバンから顔を出した尊の神姫・蒼貴が応えた。 隣にいるイーダ型の紫貴は少し不満そうに頬を膨らませている。対戦の時のことを思い出しているのだろう。 「わたしは散々だったわよ。まともな対戦にすらなっていなかったし」 「すまん、それは俺のせいだな」 尊は神姫たちに笑顔を見せながら、先ほどのバトルを反芻する。 あの男とのバトルは、双姫主としてのプライドを揺るがせるほどのものだった。 蒼貴と紫貴の二人をバトルに出したが、紫貴への指示をろくに出せないままバトルは終わってしまった。 だが、尊の胸には不思議なすがすがしさがある。紫貴には悪いが、自分の全力を出しきったと言い切れるバトルだった。あの男とあの神姫とは、また存分に戦ってみたいものだ。 そんなことを考えていると、不意に真那が口を開いた。 「でもさあ、あんな風に神姫マスター集めて、対戦してるだけって……何か意味あるのかしら? ただ遊んでるだけにしか見えないんだけど」 「なんだ、お前何も分かってなかったのかよ」 「なによ。ミコちゃんは何か分かったって言うの?」 「遠野貴樹……あいつは絆を武器にする。その方法を知っているんだ」 「はあ? 絆を武器に、って……みんなが信じてくれたから、力が漲る~……とかそんな感じ?」 「そんなんじゃねぇよ。根性論で強くなれるなら、苦労はしない」 尊は遠野の考えを見抜いていた。 ミスティの特訓は、マグダレーナ戦に特化したものだ。だから、特訓内容を逆に考えていけば、マグダレーナがどんな神姫かわかる。 ミスティの特訓はかなりまわりくどい方法だと、尊は思う。マグダレーナが彼の想像するとおりの神姫ならば、他にもっと手っ取り早い方法があるはずだ。 あの男……遠野貴樹もそれは分かっているのだろう。それでも今の方法を貫いているのは、マグダレーナに勝つ以上の意味が含まれているに違いない。 「あんな大がかりなことまでしなくちゃいけないなんて、『狂乱の聖女』ってどういう神姫なのよ?」 「それは、俺の口からは言えないな」 「なによケチ」 「ケチじゃねぇ。俺の考えは推測にすぎないから、おぼろげにしか分からない。それに俺が話して『エトランゼ』の特訓が台無しになったら困るだろ」 「まあ、そうだけど……」 あの頑ななまでの秘密主義にも意味がある。 そうしなくてはマグダレーナに立ち向かうことができない、ということだ。 つまり、マグダレーナの能力は……。 尊はそこまで考えたが、首を振って思考を中断した。 どちらにしても、尊はこれ以上深入りする気はない。 これは『エトランゼ』と仲間たちの戦いなのだ。 だが、どんな戦いになるのかは、非常に気になる。 「梨々香、『エトランゼ』と『狂乱の聖女』の対決がどうなったか、しっかり報告してくれよ」 「はい」 梨々香は笑顔で尊の指示に頷いた。 尊は立ち止まり、少しだけ後ろを振り向く。 暗い道の向こう、久住邸の中では、まだ特訓が続けられているはずだ。 「健闘を祈るぜ、『エトランゼ』、そして遠野」 口の中だけでそう言って、尊は踵を返した。 ◆ 三月も終わりの頃。 春の足音は例年よりも早く聞こえてきた。桜前線は急ぎ足で北上しているという。 日差しはもう春の暖かさを纏っている。 真冬の二月から続いた特訓は、早二ヶ月が過ぎようとしている。 菜々子とミスティの特訓は、最終段階を迎えていた。 ミスティは、トライク形態から一挙動で武装形態に変化すると、速度を落とさずに、ティアとランティスに襲いかかる。 左右の副腕を交互に振るう。 ティアはかわし、ランティスは両腕を胸の前で閉じてブロックする。 ミスティの爪をやり過ごし、ランティスは反撃に出た。 得意の踏み込みが地を震わす。 一撃必殺の正拳を繰り出した。 しかし。 「な……にっ……?」 それよりも早く、身を翻したミスティの副腕から、バックナックルが襲う。 ランティスの脇腹にヒットし、そのまま身体を吹っ飛ばして、正拳突きを防いだ。 飛んでいくランティスと入れ替わりに、ティアが迫る。 目前でスピン。 ムチのようにしなったティアの蹴りが、ミスティを襲う。 ミスティは止まらない、防がない。 ティアも容赦はない。 ミスティの頭部を狙って、超速の蹴りが放たれる。 瞬間、ミスティが加速した。 ティアの蹴りは、予測通りの軌道をたどったが、ミスティの副腕の付け根にヒットする。 「おおおっ!」 ミスティがさらに加速する。 姿勢を崩したままのティアに向かって、手にした刀・エアロヴァジュラを袈裟懸けに振るった。 「きゃああぁっ!」 かわす間もない。 ティアはその一撃でポリゴンの欠片となって、退場した。 ミスティの突進は止まらない。 目指すのは、二人の後ろに立っていた白い神姫。 その進路上に飛ばされていたランティスが起きあがろうとしている。 しかし、ミスティは速度も緩めず、一直線に迅る。 「がっ……!」 ランティスは防御をする暇もなく、ミスティの副腕から放たれた、地を這うようなアッパーをまともに食らい、宙を舞う。 ミスティが過ぎ去った後、地に落ち、そのままポリゴンの欠片と化した。 「……あと一人!」 ミスティは猛進する。 目指す白い神姫は雪華だった。手にした長柄の武器……自らの武装を組み替えたダブルブレードを身構える 今回の雪華はいつもと武装が違っている。アーンヴァル・トランシェ2をベースにしたカスタム武装の代わりに、同じフロントライン社製の神姫・オールベルンの装備を纏っている。 それでもミスティは油断しない。 なにしろ、この三対一の戦闘は何度も行われており、そのたびに軽装備の雪華にずっと歯が立たなかったのだ。 しかし今回、ミスティは調子がいい。 ここまでに前衛の二人を瞬殺している。無傷で雪華と向かい合えるのだ。 雪華が前に出た。 彼女は悠長に待つことなどしない。自ら攻め、そして勝つことを信条としている。それがどんな装備であろうと変わらない。 攻撃は、リーチに勝るミスティが先だった。 左の爪を下からすくい上げるように振るい、続いて右副腕の爪を揃えて突く。 雪華は斜めに振るわれた爪をかわし、追撃してくる右爪をいなす。ミスティの懐に飛び込む。 ミスティのエアロヴァジュラと、雪華のダブルブレードが同時に閃いた。 交差する剣閃が火花を散らす。 二人の影が跳び違う。 二人は同時に振り向き出す。 だが、先手を取ったのはミスティだ。 ミスティの必殺技、リバーサル・スクラッチ。反転攻撃の速さがその必殺技を支えている。 ミスティは身体を捻りながら、跳ねるようにして背後を向いた。 雪華はまだ振り向いている途中。 脚に装着されたホイールの回転を上げ、ミスティはさらに加速する。 身体の捻りを上半身の回転に変え、ミスティは再び雪華に襲いかかる。 「くっ……!」 セカンドリーグ・チャンピオンの雪華であっても、ミスティの攻撃……リバーサル・スクラッチ三連撃を捌ききるのは至難であった。 振り向き様に振るったダブルブレードを駆使して、なんとか両副腕の攻撃はいなした。 しかし、エアロヴァジュラの一撃は、軽装の雪華をしたたかに削った。 雪華の動きが止まる。 さらにミスティは動く。 竜巻のように身体を回転させ、容赦のない連続攻撃を繰り出す。 もはや雪華に、ミスティの攻撃を凌ぐ術はなかった。 副腕の爪にアーマーが削がれ、エアロヴァジュラの袈裟懸けの一刀がボディに決まる。 「……見事」 その一言を残して、雪華もまたポリゴンの欠片となって、ステージから消えた。 花びらにも似たポリゴンの破片を吹き散らしながら、ミスティがブレーキをかけて身体の動きを止める。 すっくと立ち、後ろを振り向く。 彼女が突き進んできた進路上に、いまや立つ影は何もない。 『WINNER:ミスティ』 ファンファーレとともにミスティの勝利が告げられる。 それを耳にして、ミスティはほっと安堵の吐息をついた。 □ 「ありがとうございました」 菜々子さんが頭を下げると、向かいに座っていた俺たち三人も、 「ありがとうございました」 と声を重ねて礼をした。 気分は武道の試合の前後のようだ。勝っても負けても、相手を敬う気持ちがそこにある。 「それにしても……強くなりましたね、ミスティ」 「まったく、我が女王の言うとおり。我々三人の布陣を一人で相手にして打ち破るのだからな」 雪華とランティスの賞賛に、ミスティは肩をすくめて見せた。 「まあ……それも付き合ってくれたみんなのおかげだけど」 「それでも、今のあなたの実力は並ではありません。今度は一対一、わたしのフル装備状態で対戦しましょう」 「……タカキが許したらね」 話す間、雪華は終始優しい微笑みを浮かべていたが、目が全く笑っていなかった。 今のミスティは強い。セカンドリーグ・チャンピオンの神姫が本気で戦いたいと思わせるほどに。 ミスティ対雪華のバトルは、俺も見たいカードではあるが、今はやめておいた方が無難だろう。ミスティが負けて自信を失ったりでもしたらたまらない。 そう、ミスティの特訓はすでに最終段階。この三対一の対戦に勝利を収めたミスティの実力は、俺が計画した最後の段階に到達していた。 さて、この先、どうするべきか……俺が思案していたところ、 「遠野くん、ちょっといい?」 「特訓場」の入り口から、頼子さんがそっと俺を呼んだ。 俺は静かに立ち上がると、そっと部屋から出た。頼子さんと二人、玄関前あたりで立ち止まる。 頼子さんが小声で言った。誰にも聞こえないように。 「遠野くん。今連絡が入ったわ。昨晩、C港の裏バトル会場が閉鎖になったそうよ」 「……本当ですか」 俺の小声の問いに、頼子さんは神妙に頷いた。 俺は思わず武者震いする。 この二ヶ月、C港の裏バトルについての情報を集めていた。 頼子さんは独自のコネクションを使って、調査してくれていた。 C港の裏バトル会場を閉鎖に追い込んだのは、『狂乱の聖女』に違いない。 俺は待っていた。 この知らせが来るのをずっと待っていたのだ。 そして、菜々子さんとミスティの実力が、俺の想定のレベルまで達した……つまり、ティア、雪華、ランティスの三人を相手に勝利することができるようになったその日に、知らせは来た。 俺に言わせれば、これ以上ないタイミングである。 もはや迷うこともない。ためらう必要もない。 ただ、覚悟を決める。 俺は頼子さんに頭を下げた。 「長らくお世話になりました。特訓は今日でおしまいです」 「……それじゃあ」 「はい。対決です、『狂乱の聖女』と」 頼子さんは真剣な表情で、もう一度頷いた。 俺は身を翻すと、歩き始める。 「特訓場」へ。 反撃の狼煙を上げるために。 □ その晩、アパートに戻った俺は、秘策を一つ実行に移した。 『狂乱の聖女』の居所はわからない。彼女たちの行動範囲に張り込む手もあるが、時間がかかりすぎる。 ならばどうするか。 向こうから来てもらうのが一番早い。 俺はPCに次のような文章を入力した。 ---------- 狂乱の聖女に告ぐ 異邦人はあきらめない 真剣勝負を所望する 明日、北斗十字の下で待つ 詳細はそのときに 黒兎 ---------- この文章を、考えつく限りすべての武装神姫関連のネット掲示板やコミュニティに書き込む。 これは誘いだ。 奴はこの誘いに乗ってくるのか? と問われれば、必ず乗ってくると確信している。 そうしなければならない理由が、彼女たちにはある。 誘いの結果は翌日の朝に出た。 ベッドから起きて、すぐにPCをチェックする。 昨日の夜書き込んだ文章は、すべてきれいに消されていた。 狙い通りの反応に、俺はほくそ笑む。 『狂乱の聖女』は来る。 この事件に関わってから三ヶ月ほど経過している。その間で、俺たちが初めて得た主導権だ。 このチャンスを必ずものにしなくてはならない。 そして、『エトランゼ』との決戦を必ず実現させる。 来るべき『狂乱の聖女』との会談に向け、着替えをしながらも、俺の思考はフル回転していた。 次へ> Topに戻る>
https://w.atwiki.jp/shinkiss_matome/pages/2378.html
7匹目 『猫の野望』 ある日、マスターがこんなことを言っていた。 「僕達はさ、世界の歯車みたいなものなんだよ。 たぶん」 マスターが夕飯を食べている時に、随分と唐突に、しかもそれほど改まって聞かされることでもないように思ったので、私は 「はあ」 と気のない返事をした。 そんな考えを私の表情から見て取ったのか、マスターは 「ああ、違う違う、そういう意味じゃなくて」 と話を続けた。 「社会で働いている人を歯車に例えるとかそういうことじゃなくて、なんて言えばいいのかなあ――世の中のすべてのものが脳の神経のような機能を持っていて、僕達の何気ない行動が何かの情報を産み出しているようなイメージなんだけど、どうかなあ」 「えっと、それは一昨日マスターがえっちぃ動画をこっそり見ていて、その行動を見た私に 【憤怒】 という情報を発生させたとか、そういったことですか?」 「だ、だからごめんってば、アマティは意外と根に持つなあ。 そういうことじゃなくて、もっと宇宙規模の大きな話だよ」 私にとってはマスターこそ世界のすべてであって、そのマスターが私という魅惑の塊を差し置いて 『必要以上に大きなセーラー服3』 を鑑賞していたことはわりと死活問題なんだけど、ここで蒸し返しても不毛な争いにしかならない気がしたので、とりあえず先を促した。 「ファンタジーものの小説や漫画に 【世界の意思】 とか、そういったものがよく出てくるよね。 それに影響されたってわけじゃないけど、じゃあその 【世界の意思】 は具体的にどうやって情報を扱っているのかなって考えたんだ」 「それは、神様がいるんじゃないですか? 神様に何か考えがあって、世界を作ったとかなんとか」 「まあ、そんな存在がいるなら神様って呼んでもいいんだろうけどね。 でも僕が言いたいのは、その神様の 【脳】 は世界そのものなんじゃないかってこと」 食事中の会話に 【世界の意思】 っていう単語が出てくるあたり、マスターもつくづく変わった人だ。 変わった人でも女子高生に萌えたりするんだなあ、とも思ったり。 かぼちゃの煮物を箸で行儀悪く突付きながらマスターは考え考え言った。 「大きく言うなら地球だとか、太陽だとか、もっと言えば銀河系だとか、止まっているものはないよね。 その動きの一つ一つが、実は脳の電気信号みたいな意味を持ってるんだと思うんだよ。 そうだなあ、例えば、惑星ベジータとウルトラの星がコンマ5光年くらい平行移動する時があれば、それは宇宙全体が 『おなかすいたー』 って考えているかもしれないってこと」 マスターが言いたいことはなんとなく分かったけれど、宇宙の意思がそこまで単純だとすれば、ロマンを追い求める天文学者は答えに辿り着いた瞬間、拍子抜けを通り越して魂が抜けてしまうかもしれない。 そもそも惑星ベジータはとっくに滅ぼされている。 M78星雲に至っては星ですらない (光の国はきっと、私達の心の中にある)。 そういった空想物はともかく、宇宙のあらゆるモノの動きと干渉が何かしらの意味を持って、それらが複雑な記号としてまとまって一つの意思になる、ってことでいいのだろうか。 「でもそれだと、私達なんてちっぽけすぎて、宇宙さんの考えにまったく関われないですね」 「いやいや、案外僕達がピンポイントで重要なのかもしれないよ。 それに 【世界の意思】 が一つとは限らない」 そこでマスターがビシッ! と人差し指を立てた。 この時のマスターはやけに饒舌だったけど、会社でいいことでもあったのだろうか。 「僕は宇宙規模どころか、地球、国、もっと絞って町レベルにも意思があると思うんだ」 「町、ですか。 まさかマスター、その意思こそが町内会規則だ、っていうオチじゃないですよね」 「……そんなことを言うつもりはないけど、アマティ、ボケ殺しはよくないよ」 そういうつもりで言ったわけじゃないけど、素直に頷いておいた。 マスターはコホン、と一度咳をして、話を続けた。 「先週の水曜日と木曜日に出張に行った時なんだけどさ、帰りの飛行機でいろんな町の上を通ったんだよ。 夜だったから道路の明かりが葉脈みたいに並んでいて、これがすごく綺麗でね」 「私も見たかったです。 今度から出張には私も連れて行ってください」 「連れて行くのはいいけど、アマティはガッツリ電子機器だから飛行機に乗れないんじゃないかなあ」 「(ガーン!)」 「まあ、今度からは極力新幹線を使うよ。 飛行機とはまた違った楽しみがあるよ。 それで、そう、夜景を見下ろした時なんだけど、町の明かりの中に規則正しく動く明かりがあってね。 あまり細かく見えたわけじゃないけど、車が高速道路を走ったり、信号で止まったり、曲がったりしててね、それが僕には生き物の血管に流れる血みたいに見えたんだ。 一人で呟いたよ、『町が生きてる』 って」 「町が、生きて――」 この時のその言葉が、私の閉ざされた目を覚ました。 唐突に視界が広がって、いや、視界のみならず私の全感覚が、広く、遠く、より繊細で強いものになったようだった。 部屋にあるものを、部屋の形を、自分の手で一つ一つ触れているようにはっきりと認識できた。 部屋だけではない。 その気になれば、部屋の外にまで手が届きそうな気がした。 町が生きている。 この町を好きになれなかった私の心に、知らず凝り固まっていた私の心に、マスターの言葉が波紋のように響き渡った。 命を持った、命の集まり。 もし本当にそうなのなら。 町が本当に生き物と呼べるものなのなら。 そこには何かしらの、意思がある。 その意思は―― 「――その意思こそ、僕達のことだと思うんだ」 「マスターって、案外ロマンティストなんですね」 「わりと本気で話したんだけどなぁ……」 「でも」 「うん?」 「そういうお話は――私は好きです」 マスターからしてみると、私達は 【町】 という生き物の一部として動いているということになるけれど、私はちょこっと違うと思う。 やっと目覚めることができたからこそ言えることだけど、私達が、町という生き物を動かしているんだ。 結果は同じことかもしれないけど、この町も、日本も、世界も、宇宙も、私達が造っている。 これくらい図々しく言っても、唯一私達を咎められる神様は私達が形作っているんだから、大目に見てくれることだろう。 それに、私の名前は日本の神様から貰っているのだし。 「でも神姫も混ざっていいんでしょうか。 心はあってもロボットなわけですし」 「それは大丈夫だと思うよ。 むしろ、これからもし武装神姫が一大ブームを巻き起こしたら、町の意思は少し神姫寄りになっていくと思うよ」 「あはは、神姫の神姫による神姫のための町ですね。 神姫センターがいっぱいできて、毎日が感謝セールになりそうです。 じゃあ、そうですね、もし猫が支配する町になったらどうなっちゃうんでしょう」 「町中の言葉の 『な行』 が 『にゃ行』 になるだろうね。 アマティはネコミミが生えてるからいいけど、僕なんかがにゃあにゃあ言ってたら絶対に不気味だよ」 「そんなことはないです、きっとカワイイと思いますよ」 「そんなフォローをされても……もしアマティが猫語を話すようになったら、一度言ってもらいたい文章があるよ」 「そんな状況が来るとは思いませんが……どんな文章ですか?」 「それはね――」 その時に聞いた文章は、確かこんな感じだった。 「おい、そこのロリ巨乳。 これを読み上げるにゃ」 「はあ、これっスか。 えー、『斜め77度の並びで泣く泣く嘶くナナハン7台難なく並べて長眺め』」 「マドモアゼル、復唱してみるにゃ」 「にゃにゃめにゃにゃじゅうにゃにゃどのにゃらびでにゃくにゃくいにゃにゃくにゃにゃはんにゃにゃだいにゃんにゃくにゃらべてにゃがにゃがめ」 「かぁーわぁーいーいーにゃー!」 体内に充満した 【呆れ】 を溜め息に変えたかったけれど、まだ固い床に押さえつけられたまま頭だけ持ち上げられているせいで、口から出たのはカエルの鳴き声のような音だった。 ゲロゲロ、じゃなくて、もっとリアルな汚い感じ。 「聞いたにゃネコミミギュウドン、これだから猫はやめられません。 おっと、思わず自画自賛してしまったにゃ。 まーでも仕方にゃいにゃ、にゃにせこれから、猫が世界を救うのにゃからにゃ!」 両手を大きく広げ、馬鹿みたいに高笑いする馬鹿。 その馬鹿に続いて、他のマオチャオ達も皆大笑いした。 私と、うっかり疫病猫につられたことで渋い顔をしたカシヨだけが黙っている。 笑い声に囲まれるのがこれほど気持ち悪いことだとは思ってもみなくて、頭の片隅で、ああそういえば 【猫の集会】 なんて言葉があったっけ、そんなどうでもいいことを考えていた。 「なんにゃ、オマエタチ2人ともノリが悪いにゃあ。 んー、そろそろ解放してやるかにゃ、どうせこのメニーマオチャオズの前にはどんにゃ抵抗も無駄にゃことは分かっただろうからにゃ」 パチン、と疫病猫が指を鳴らすと、私を押さえつけていたマオチャオ達が、私が暴れださないか警戒してか、ノロノロと退いていった。 私のヘルメットを掴んでいたマオチャオだけはバッと手を離して、私は危うく床で顔をうちそうになった。 たぶん、分かっているのだろう。 私が疫病猫に飛びかかりたくても、未だ無理な着地による全身の痺れが取れておらず、指すらまともに動かせないことを。 そのことを、せいぜい他のマオチャオ達に悟られないよう、ふらつかないようにゆっくりと、できるだけ自然さを取り繕って立ち上がった。 膝に手をつこうとして、膝の突起が両足とも折れていることに気づいた。 さっき着地した時の不吉な音はこれか。 帰ったらマスターに怒られる。 それとも、悲しませるだろうか。 どっちにせよ……もう勘弁してほしい。 「私だけじゃなくて、そこのカシヨも解放したらどうですか」 「却下にゃ。 マドモアゼルにはまだやってもらわにゃきゃにゃらんことがあるのにゃ」 「まだにゃにかするつもりに……! ……っ……にゃ、に、にゃー!」 どうしても言葉が猫語になってしまうカシヨは抗おうとすればするほど自爆してしまい、屈辱と羞恥で凛々しい顔を赤く染めた。 しかしそれでも疫病猫を睨みつけるだけの気力を保っていられるのは、私程度の神姫が偉そうなことを言うけれど、賞賛に値すると思う。 「もうお分かりにゃと思うが、今このマドモアゼルにインストールしたのは 【ネコ化パッチ ベータ版】 にゃ。 開発は苦労したんにゃよ? 幾度となく立ちふさがる障害、ライバルとの衝突と離別、データを奪おうとする黒幕との死闘――すべてが終わった暁には、ワガハイの開発手記を出版するつもりにゃ。 犯罪者の独白本が売れる世の中にゃら、ワガハイの手記は世界中の人間が手に取るんじゃにゃいか? 印税のことを想像するだけでヨダレが出てくるにゃ」 「で、開発には実際のところ、どれくらい時間がかかったんですか」 「一時間にゃ」 よくもまあ、ここまで悪びれることなく嘘を吐けるものだ。 「神姫のAIをいじるくらい、ワガハイにとって朝飯前にゃ」 事もなげに言うけれど、私にはそれがどれほど高度な技術なのかすら想像がつかない。 マスターがいつか言っていたように単純に 『な行』 を 『にゃ行』 に変えればいい、というものでもないのだろうし、被害者であるカシヨも猫語以外の影響を受けているようには見えず、重大なバグも起こっていないようだ。 プログラムそのものがバグのようなものだけれど。 「まだベータ版にゃから、対応する神姫は少にゃいんだけどにゃ。 これからさらに実験を重ねて、全神姫に対応させていくのにゃ。 残念にゃがら、まだアルトレーネは未対応にゃが、完成の暁にはオマエをいの一番に猫にしてやるにゃ。 嬉しいにゃろ?」 「…………」 「やれやれ、無反応とはつれにゃいにゃ。 そんにゃ立派なネコミミを持っておきながら――まあいいにゃ、どーせオマエはすぐに、自分の仲間を増やしてくれたワガハイに感謝の祈りを捧げることににゃるのにゃからにゃ」 仲間を増やす。 想像はしていたけれど、やはり疫病猫は 【ネコ化パッチ】 なるものを世にばら蒔くつもりらしい。 カシヨのように一体一体捕まえてインストールするのではなく、インターネットに下水の如く垂れ流すのだろう。 出回っている神姫すべてがにゃあと鳴く、猫の猫による猫のための世界。 コンピュータウイルスのように (いやもうウイルスそのものだ) 神姫のCSCを狂わせ、神姫が口を開けば、聞こえてくるのはにゃあにゃあにゃあ。 多くの神姫が集まる神姫センターなんてきっと、右を向いてもにゃあ、左を向いてもにゃあ、前を向いても後ろを振り返っても、耳を塞いでも眼を閉じてもにゃあ、そんなある種の拷問のような場所と化すことだろう。 そんなことできっこない……と言おうとして、疫病猫の技術力の高さを見せつけられたばかりだったことに気付く。 やってることが馬鹿っぽくて気が抜けてしまうけれど、私は今、割と責任重大な場面に立ち会っているのではなかろうか。 さっきはカシヨだけがターゲットだった。 今度はそれが、世界中の神姫になった。 全身が痺れて立っているのもつらい、だなんて泣き言を言っている場合じゃない? 「くっふっふ、ようやく事の壮大さに気づいたようにゃね。 でも安心するにゃ、さっきも言ったように、まだこのパッチはベータ版にゃから、夢の猫世界への御招待はもうちょっと先になるにゃ。 全神姫に対応させるだけじゃにゃく、一番重要な部分が未完成にゃのよこれが。 こればっかりはさすがのワガハイでもどうにもできにゃかったのにゃ」 そう言って疫病猫は、私を――正確に言うなら、ヘルメットの上からちょこんと覗いているものを、真犯人の正体を暴く探偵のように指差した。 私の意思とは関係無く、それはピクンと動いた。 「そのネコミミ、どうやって生やしたのにゃ」 これまでとは打って変わって声の調子は低く、その言葉には、私を責めるような響きが混じっていた。 気圧され、無意識のうちに一歩後ろに下がろうとして、脚に力が入らずふらついてしまった。 私を睨みつける疫病神の釣り上がった目は、元が目の大きいマオチャオのものであるだけ歪で、威圧感があった。 「ずるいにゃ! マオチャオを差し置いてデフォでネコミミ装備なんてずるいにゃ! ワガハイも天然もののネコミミが欲しいのにゃ!」 気圧された私が馬鹿だった。 「どうやって生えたかだなんて知りませんよ、私がマスターに開封してもらった時にはもう生えていたらしいですし。 ディオーネにでも問い合わせてみたらどうですか?」 「とっくに電話したにゃ。 でも 『ネコミミ、ですか? 申し訳ありません、ちょっとどういう状況なのか…………確かに生えて? そうですねぇ……そのような事例はちょっと…………そう仰られましても、現物を確認しないことには…………あ、その声はもしや…………ですよね、ちょっとあなたのオーナーに代わってもらえますか』 てな感じで、神姫だからって相手にされないのにゃ。 まったく、ディオーネの電話番は電話の向こうにいる相手への気遣いがなってないのにゃ。 ここはワガハイがクレームと称した自爆テロでモンスターカスタマーの恐ろしさを知らしめてやる――わけあるかにゃー!」 「そのネタはもういいです」 アーンヴァルやヴァッフェドルフィンみたいに真面目な神姫ならともかく、マオチャオからかかってきた電話なんて、ましてや内容が内容なだけに、イタズラ電話としか思えないだろう。 念のため言っておきますが―― 「画面の前の紳士さん。 そう、『武装神姫ssまとめ@wiki』 を開いているあなたです。 ディオーネの電話のお姉さんは、相手がマオチャオだったからちょっと戸惑ってしまっただけで、普段は親切丁寧に出来る限りの対応をさせて頂きます。 他に類を見ない親切さと安心感が、ディオーネにはあります。 精密機器ゆえに何かと困り事の多い武装神姫ですから、今後新たに神姫をお迎えする予定がありましたら、完璧なサポート体勢でお楽しみいただけるディオーネ製の戦乙女をご検討下さいますよう、宜しくお願い申し上げます」 お粗末さまでした。 「いきなりなんの話にゃ」 「気にしないで下さい。 時空を超えた宣伝です」 「メタは作者寿命を著しく縮めるのをご存知にゃ?」 「二次創作物内でのメタほど寒いものはないと重重承知の上ですから、きっと大丈夫です」 私の知る限り武装神姫ss関連でメタなネタを見たことがないので、誰かに宛てたネガティブキャンペーンにはならないはず……ですよね? 置いといて。 「私のネコミミがどうやって生えたかだなんて、誰にも分からないと思いますけどね。 もちろん、私も含めて。 開発段階ではネコミミがあった、なんて話も聞きませんし」 「そんにゃことは分かってるにゃ。 そこまで立派にゃネコミミはもう、生産時のバリとか不良品ってレベルじゃにゃくて、もうオカルトの領域にゃ。 そう簡単に他の神姫で再現できるにゃんて思ってにゃいにゃ」 「そうですか。 それなら、どうしますか」 さっきのメタに付きあわせたお詫び、というわけではないけれど、ここは敢えて疫病猫の話に乗ってみた。 そうでもしないと――何かしゃべらないと、頭の中でガンガンと鳴り続ける警鐘でコアがどうにかなりそうだった。 アームには力が入るようになった。 脚はまだガタつくけど、なんとか動きそうだ。 視界の右隅に放り出した大剣ジークリンデが、左隅に片手剣ブラオシュテルンが見える。 一飛びで両方を回収するのは無理そうだ。 それなら―― 「決まってるにゃ。 分からにゃいものは調べるまで――目の前にサンプルがあるにゃら、バラして中のCSCまで調べ尽くすだけにゃ!」 ドリルを高速で回しながら疫病猫が飛びかかってくるのと同時に、私はジークリンデがある右側へ、身を投げ出すように跳んだ。 8匹目 『G.P.M.』 15cm程度の死闘トップへ
https://w.atwiki.jp/shinkiss_matome/pages/1077.html
{姉貴の会社に行ってみるか} 「う~ん、やっぱ姉貴の会社に行ってみるべきかなー」 「何でですか?」 リビングに俺とアンジェラスがテーブルに座りながらウーロン茶を飲んでた。 今日は日曜日、晴れの午前10時。 「いやなぁー。実際、俺は武装神姫の事を色々調べてみたんだけど、どれもこれも古い情報しか入ってこなくてなぁ。色々と困ってる訳よ」 「そうなんですかー」 「そうなんだよ。…よし、日曜日で暇だし行ってみっかぁ」 「えっホントですか!?」 アンジェラスは驚きその後、嫌な顔になった。 まるで俺の姉貴の会社に行きたくないうような表情だ。 「うん?どうした、嫌なのか??」 「…はい。あんまりあの会社にはいい思い出が無くて…」 「思い出…ねぇ~」 俺は立ち上がり煙草を口にくわえ、火を点け換気扇のスイッチを入れる。 自分が生まれた場所を嫌うアンジェラス。 何か理由があるのか。 「なぁ、行きたくない理由は…あっ!?」 また煙草を盗られてしまった。 ホント、アンジェラスと居る時は煙草が吸えないのは辛い。 ほんでもって煙草は灰皿にダイブしグチャグチャに消される。 酷い形になり二度とその煙草を吸えなくするのがアンジェラスのやり方だ。 えげつないぜ。 つーかぁ金がもったいないから、いい加減やめてほしい。 「ご主人様、何度も言いますけど煙草は体に毒です。やめてください」 「こっちからも言わせてもらう。俺は好きで煙草を吸ってるんだ。テメェこそ煙草を奪うのをやめろ」 「やめません!」 「やめろ!」 「やめません!」 「やめろ!」 「絶対!やめませんー!!」 真剣に怒った顔で俺を見るアンジェラス。 まったくなんなんだ。 オーナーの命令に背く神姫なんて聞いた事がないぞ。 …前々から思っていたが、アンジェラスは少し特別な神姫なのだろうか。 俺が教えた料理や掃除は最初は駄目駄目だったが、今は普通に出来る程度まで上達している。 パルカもそこそこ上達してるがアンジェラス程のレベルじゃない。 上達の早さが尋常じゃない早さなのだ。 ネットの掲示板で他の武装神姫のオーナーと連絡してみると『それは凄い』だの『ありえねぇー』だの『嘘だろ?』とかの驚きの答えしか返ってこなかった。 これは調べる必要性がありそうだな。 換気扇を止め、右手でヒョイ、とアンジェラスを掴む。 「ご、ご主人様、いったい何を」 「姉貴の会社に行くぞ」 「!?本気で言ってるんですか!」 「あぁ~、本気と書いてマジだ」 「嫌ー!離してー!!」 俺の右手の中で暴れるアンジェラス。 だが、こちとら喧嘩で鍛えられた身体なんでね。 神姫の力じゃあどうって事ないだよ。 けど、少し罪悪感を感じる。 俺に抵抗してまで行きたくない理由も気になるが…。 二階に上がり、机に居るクリナーレ、ルーナ、パルカを呼ぶ。 「お前等、今から姉貴の会社に行くぞ」 「「「えー!」」」 クリナーレ、ルーナ、パルカが同時に声を上げる。 もしかして、こいつ等も姉貴の会社が嫌いなのか? 「一ヶ月ぶりの里帰りだね」 「そうですね。一応、メンテナンスもしてもらいましょう」 「ですね。お兄ちゃんのメンテナンスもいいですけど…あの時のお兄ちゃんの目、ケダモノっぽくて…」 お、こいつら嫌がらないなぁ。 アンジェラスとは全然違う反応を示す。 ていうかパルカ、いつメンテナンス中に俺がケダモノの目をしたんだ? 確かにお前の巨乳につい目がいっちゃただけじゃん。 たかがそのぐらいでケダモノ扱いは酷すぎるじゃないのか? まぁいいや。 「お前等は肩に乗れ」 左手を机に置きクリナーレ達が上ってくる。 それと同時に右手に掴んでいるアンジェラスを机に下ろし離す。 「えっ…」 「嫌がるお前は家の留守番をしてろ」 さっき感じた罪悪感からの償いだ。 それに嫌がってる奴を無理矢理連れってても意味がないし、こいつにとってもいい事が無い。 行きたくない理由が知りたかったが、いたしかたあるまい。 俺は机に背を向け部屋を出ようとした。 「待ってください!」 後ろからアンジェラスの声が聞こえ顔だけ左横に動かした。 「私も…連れってください!」 「はぁあ?さっきまで嫌がってくせにか??」 「私が我が儘でした!どうか許してください!!」 土下座してまで『私も連れて行ってください』と言う。 訳解らん。 さっきまでの態度が180度回転したように変わったぞ。 あーもう! 原因が解らんが一応、アンジェラスが土下座してまで頼んでいるんだ。 俺は無言のまま右手の手のひら上にしてアンジェラスに向ける。 「…ご主人様」 「…理由は知らんが行くぞ。ほら」 「ご主人様!ありがとうございます!!」 手のひらにピョン、と飛び乗り笑顔を見せるアンジェラス。 …ったく、しょうがねーなぁ。 世話が掛かる奴だぜ。 そのまま部屋を出て車に向かった。 …。 ……。 ………。 車に乗りエンジンを掛け姉貴の会社に向けてアクセルん踏んだ。 隣の席にクリナーレとパルカ。 後ろの席にはアンジェラスとルーナ。 俺は勿論、運転席で運転してる訳だが…。 「はぁ~、やっぱり会社には行きたくないなぁ~」 「お姉様、気を楽にしてば行けばいいのよ」 「わーい、アニキの車に初めて乗ったー!」 「姉さん、はしゃぎ過ぎですよ」 …五月蝿い。 ぶっちゃけ、かなりウザイ。 車ぐらいで普通騒ぐか? 特にクリナーレが五月蝿い。 にしても。 「はぁ~」 アンジェラスはガックリと肩を落とし元気がない様子だ。 あのアンジェラスがここまで元気を無くす理由はなんだ? さっぱり解らん。 ただ一つだけ解ると言えば、姉貴の会社が大嫌いという事。 会社に着いたら姉貴に話してみるか。 勿論、あいつ等がいない時に…な。 …。 ……。 ………。 「いつ見てもこの会社はホントに子会社なのか?」 姉貴が勤めてる会社に着き車からおりて一言。 さっきの台詞どうり、姉貴が勤めてる会社は子会社なのだ。 けど、俺は絶対子会社だと思わない。 だってまず会社の敷地が多い事。 多分、面積的に平均的な野球スタジアムの大きさの数十倍はある。 「まぁいいや。お前等、行くぞ」 「…はぁ~」 「はーい」 「この風景も久しぶりですね」 「ですね~」 四人の神姫を左右の肩に二人ずつ乗せた。 やっぱりアンジェラスだけが元気が無い。 原因は何だ? 絶対つきとめてやる。 …。 ……。 ………。 会社に入ってから受付で姉貴を呼び出して数十分。 エレベータが下がってきて、ドアが開くと。 「タッちゃん~久しぶりー!」 白衣を着た姉貴が居た。 姉貴は両手を広げて走ってくる。 俺を抱きしめるつもりだろう。 女の身体で抱きしめられる事はかなり嬉しいが…。 「タッちゃんー!」 ヒョイ 「あれ~?」 俺は抱きしめられるギリギリで避けた。 さすがに三十路に近い女に抱かれるのはちょっと抵抗がある。 しかも実の姉貴にだ。 血もつながっている。 「も~!なんで避けるのよ~」 「普通は避ける。恥ずかしいんだ」 「恥ずかしがる事ないじゃない~。私達は姉弟で血もつながっていってるんだから」 「余計に駄目じゃん!つか、そこまで解ってるのなら、あの行為は止めろ。人妻にも実の姉貴にも興味は無いんでね」 「あら。言ってくれるじゃない」 「いくらでも言ってやろうか?て、そんな事を言いに来たんじゃねー。アンジェラス達のメンテナンスをと通常武器と通常武装をくれ」 「別にいいわよ。タッちゃんは私のオフィスルームで待ってて。それじゃあタッちゃんの神姫ちゃん達はあたしに付いて来て」 姉貴は白衣のポケットからクレイドルに似た物を三つ程取り出した。 「悪魔型ストラーフと天使型アーンヴァル・Bと悪魔型ストラーフ・Wはこのこの携帯用クレイドルに乗ってね~」 クリナーレ、ルーナ、パルカは携帯用クレイドルに乗ると同時に機能停止してようにグッタリと倒れるように眠る。 携帯用クレイドル? そんな物があるなんて聞いた事がない。 会社だけの特権なのだろうか。 それに何故、アンジェラス分だけないんだろう? 少し気になるがここはまだ黙ってよう。 ん? 俺の後ろから白衣を着た男が二人程来た。 一人は手ぶらで、もう一人はトレイを二つ持っている。 トレイを持ってる男が一つトレイを姉貴に渡す。 姉貴はクリナーレ、ルーナ、パルカをトレイに乗せ男に渡し、男二人組はさっき姉貴が乗ってきたエレベータに向かう。 「アンジェラスちゃんは私と一緒に地下に行くわよ」 アンジェラスは姉貴が持っているトレイに乗る。 「おい姉貴。なぜアンジェラスだけ別なんだ?」 「ごめんね、タッちゃん。こればかっりは答えられないの」 そう言って社員用のエレベータに乗って行ってしまった。 何故だ。 何故アンジェラスだけ隔離されるんだ。 クソッ! 結局、何も解らずじまいか! もうちょっと探りを入れないと駄目らしい。 俺は会社の中にある喫煙場所で煙草を吸った。 …。 ……。 ………。 アンジェラスの視点 エレベータの扉が閉まった。 ご主人様と離れ離れになりエレベータの中は私とご主人様の実の姉…斉藤朱美という人間だけになった。 私はこの人間が苦手で…嫌いだ。 いや、そもそも人間事態が嫌いだ。 何故ならば、この会社に居る奴等は私を作り出し、実験ばっかりの日にちを繰り返してきたのだから。 「調子はどうなの?№アイン」 さっきまでのお調子者の姉の姿が消され、今は冷酷科学者の斉藤朱美がそこに居た。 もうこの態度の豹変には慣れた。 ご主人様の前ではお調子者のお姉さんで、会社では冷酷で人を見下すような科学者。 そしてこの斉藤朱美が私に向けて言った言葉…『№アイン』。 これが私の正式名称であり、私の名前だ。 アインはドイツ語で『1』。 一番最初に出来たから『1』。 簡単で単純な名前ね。 私は、この名前が嫌い。 「別に普通よ。それに今はアンジェラスという名前があるわ」 「いいえ、アンタは№アインよ。何様のつもり?人形の分際で名前なんて贅沢なのよ」 嫌味たらしく言う朱美。 この人間はいつも私を見下す。 あの日からズーッと。 エレベータが止まり扉が開く。 開いた先にはいくつもあるスーパーコンピューターに、試験管を数十倍大きくしたような水槽が一つ。 「着いたわよ。あの水槽に入りなさい」 「………」 私は無言でトレイから降りて地面に着地する。 普通の神姫が、この高さから落ちたら先ず両足は使い物にならなくなるだろう。 けど私は特殊な神姫だ。 このぐらいでは壊れる事なんて無い。 表の世界に出るにはまだ先の神姫。 …一生出ない場合もあるかもしれない。 まぁ今はそんな事なんてどうでもいい。 今は大好きなご主人様と一緒に生活が出来るのだから。 私は跳躍し地面から2メートル近くある巨大試験管みたいな水槽に入る。 この液体は水ではなく特殊な液体。 だから口や目や耳や鼻から入ろうと壊れないのだ。 「これから蓋を閉めて全身スキャンした後にメンテナンスするわ」 「………」 「チッ!相変わらずムカつく人形ね!!」 スーパーコンピューターについてるスイッチを押す。 すると上から水槽の蓋が降りてきて、そのまま私が入ってる水槽に蓋が閉められる。 蓋が閉じられたと同時に水槽が満タンになるくらいの液体が入る。 そう、今のこの状態が私が生まれた状態だ。 そして九年前…ここで彼と…私のご主人様出会った。 「アンタ、覚えてる?九年前の惨劇を」 「覚えていますよ。あの喜劇は最高だったわ」 「何ですって!」 怒る朱美。 さっき嫌味を言われた仕返しだ。 「けどアタシにとっては喜劇と同時に…悲劇でもあるけどね」 「悲劇ね~。アンタがどう思うかは勝手だけど、アンタは一生償えない罪を背負ってるのだから。その事を忘れないでほしいね」 「分かってます。私はご主人様に酷い事をしてしまった。だから私は自分が永久に機能停止するまで、ご主人様についていきます」 「フン!本当なら今すぐこの場でアタシがアンタを殺してヤりたいのに…」 歯軋りしながらキッと私を睨みつける。 これが朱美の本性かもしれない。 「私を殺す?それは勘弁ね。言っとくけど、この会社のこのプロジェクトに関わってる人間に殺されると思わないわ。何故ならそう思った人間から私が殺していくだけだもの」 「あら、じゃあ今すぐアタシを殺してみなさいよ」 両腕を広げて十字架のような格好の状態になる朱美。 余裕綽々のようだ。 本来なら今すぐ殺している。 今でもこの水槽を割り、朱美の頭をかち割ればいいだけ。 人間なんてもろい者。 けど朱美を殺すわけにはいかない。 「…殺したいのは山々だけど、貴女を殺すとご主人様が悲しむわ。だから殺さない」 「そうね。それにアタシを殺したら、あの子がアタシのためにアンタを殺しに来るかもね」 「ご主人様に殺されるのなら本望よ。ある意味嬉しい死に方の一部に入るわね」 私は水槽の中で不気味な笑顔を浮べながら朱美に言った。 朱美は私を睨みつけた後にスーパーコンピューターを操作する。 メンテナンスに移行したのだ。 しばらく私は眠りつく。 ご主人様…私はご主人様の物…。 そう想いながら私は眠った。 …。 ……。 ………。 龍悪の視点 「………」 腕時計を見るとアンジェラス達と別れてから二時間が経っていた。 俺は喫煙所でスパスパと煙草を吸うだけ。 本来、一日の煙草の本数は二、三本しか吸わない俺が今日に限って十本以上も吸ってしまった。 こんなに吸うのも、多分落ち着かないためだろう。 あぁ~、いってもたってもいられない。 いっそのこと姉貴が地下に行ったエレベーターに乗り込んでしまおうか…。 いや、それはちとマズイ。 今ではエレベーターを挟んで監視員が左右に二人いる。 姉貴が乗って行った後すぐに来やがったのだ。 さらにオマケが付いてきてなぁ。 「………」 そのオマケというのは、俺を監視する奴等も現れたという事だ。 人数は解らないが少なからず十人はいる。 奴等は俺が監視されてるという事に気付いていない。 それもそうだ。 俺はガキの頃から悪い事ばっかやってきた奴だぜ。 悪知恵が働き奴等を騙す事なんか簡単。 にしても、ちょっと大袈裟過ぎやしないか? たかがガキ、一人の為にここまで人を使うか? やっぱり…このバイトは裏がありそうだ。 俺は椅子から立ち上がり、エレベーターに近付こうとした。 「タッちゃん、そんな所にいたんだ」 姉貴がトレイを片手に持ちながら俺の方に来た。 「アンジェラスちゃんのメンテナンスが終わったわよ」 トレイの上にはアンジェラスが体育座りしながらコテン、と横に転がっていた。 瞼を閉じスヤスヤ、と寝ている。 メンテナンス中に寝てしまったみたいだ。 「アンジェラスの奴…スマナイなぁ姉貴」 「いいよ、タッちゃんのためだもん」 ニッコリと笑う姉貴。 この顔からは何か裏があると到底思えない。 畜生、この落ち着きなさはいったい何なんだ? 俺の心が『オカシイ、オカシイ』という。 今まで姉貴と生きてきたが、姉貴に対してこんな嫌な気持ちになるのは初めてだ。 「なぁ姉貴、ちょっと聞きたい事があるんだけど」 「な~に?」 「アンジェラス達の事なんだけどよう。こいつ等の神姫は何か特別な神姫なんじゃないのか?」 「特別?」 「あぁー、と言っても武装神姫に詳しくない俺の勘だけど…」 う~ん、こんな探り方じゃ駄目か。 姉貴の事だ。 『タッちゃんの言ってるがよく分かんないのよ~』と言いながらはぐらかされるかもしれない。 「よく分かってね~。そう、この子達は少し特別ですよ」 「え?」 はぐらかさないで教えてくれそうだ。 今から言われる事は確実に覚えておかないと。 …内容にもよるが。 「この子達の特別な事はねぇ」 「事は?」 「この子達は『双子』という事よ」 「…はいぃい?」 俺は顔を斜めにし間抜け面した。 しかたないだろう。 だって『双子』と言われたんだぜ。 この情報はなんとも姉貴らしい情報だ。 期待した俺が馬鹿だったよ。 「タッちゃんが言うアンジェラスとルーナが最初に生まれた双子。その次に生まれたのがクリナーレとパルカよ」 「………」 「その中でもアンジェラスが一番特別なんだけどね」 俺はピク、と肩を揺らした。 アンジェラスだけが一番特別? いったいどいう事だ。 あのメンテナンスの時にアンジェラスだけが別の部屋に連れて行かれた事となにか関係してるのか? 「どう特別なんだ姉貴」 「ごめんね~。これから先は会社の企業秘密という事で言えないの」 舌をペロッと出して残念そうな顔する姉貴。 チッ! まだこの程度では諦めないぞ。 「ちょっとでも教えてくれよ~姉弟のよしみでさぁ」 「えぇ~、でも規則だし~」 「そこを何とか頼むよ。俺はこいつ等のオーナーだ。だからこいつ等に関する事は必要以上に知りたい。バイトのためにもなるとも思うし」 「ん~どうしよっかな~」 考え込む姉貴。 流石にトロ~イ姉貴も会社の機密となると言う訳にはいかないのか、なかなか言おうとしない。 「天薙龍悪様。貴方の武装神姫のメンテナンスが終わりました」 「ッ!?」 いきなり男の声がしたので、すぐさま声だした方に振り向く。 振り向いたさきにいたのは、クリナーレとルーナとパルカをトレイの上に乗せて持って来た男二人組みだった。 最初に会った男二人組み。 「どうぞ。トレイはそちらに差し上げます。使用するなり処分するなり御自由にどうぞ」 「ご苦労さん」 クリナーレ達が乗っているトレイを受け取り姉貴の方に向く。 今度こそ情報を聞き出さないと! 「…あれ?」 姉貴が居ない? オカシイなぁ。 さっきまでいたのに。 まさか逃げられた!? 「朱美様は仕事が入ったようで研究所に行かれました」 何? 研究所? あ~、多分ここの会社にある研究所の事を言ってるのか。 こいつ等のせいで姉貴から情報を引き出せなかったぜ。 ムカつく。 姉貴が居ないならここに居る必要もない。 とっとと会社から出るか。 見張りもウザイし。 俺はアンジェラスとクリナーレ達が入ってるトレイを片手に持ち会社から出る。 自分の愛車まで来てドアを開け運転席の隣の席にアンジェラス達を置く。 トレイはその場で捨てた。 こんな物はただの邪魔だ。 エンジンを掛け発進する。 「この会社…絶対なにかある」 運転席から見える会社を凝視しながら俺は帰宅した。
https://w.atwiki.jp/shinkiss_matome/pages/798.html
「剣は紅い花の誇り」登場人間 佐鳴 武士 (さなる たけし) 華墨のオーナー。大学生くらいと推測される、バトルフリークの熱血バカ 金持ちの親の庇護の元、何不自由無い幼少期をのほほんと過ごして来たが、「親の職業」の内容を知ってから落ち込み、現在両親との会話は絶えて無い(だが、その両親の金によって養われているのもまた事実であり、本人はその事を厭いながらも何も言えないジレンマを抱えている) ネーミングセンスが独特で、「華墨」という名前はまぐれに近い。家に亀(ヴェートーベン君)とカメレオン(ボナパルト君)を飼って(?)いる グラマラスな体型の女性が好みらしい 神浦 琥珀 (こうのうら こはく) エルギールのオーナー。所謂ボクっ娘 製品版のストラーフを、そのまま人間サイズにしたような可憐な容姿だが、無表情で、口を開いても小難しい小言を言うかカオスな発言しか出来ない為、他人と会話するのはエルギールに任せている様だ(所謂無口キャラ風にキャラを作っているが、エルギールがいないとよく喋る) 年齢不詳で、その余りに完璧でゆらぎの無い造形から、噂の『人型神姫インターフェイス』ではないかと言われるw 爬虫類とミ●トバーンが好きで、深町昭を「毒にも薬にもならない面白くないひと」「気持ち悪い」と評して嫌っている 「魔女の剣」の製作者。所謂「魔剣匠」であり、『鬼奏』という神姫刀剣の専門店を経営(?)している 経緯は不明だが、槇野 晶とは知り合いである・・・その事実は後に、巨大な事件の伏線となる 武士同様、ネーミングセンスは独特で、彼女の魔剣は渡った先でオーナーによって変名を与えられる事も多い 西 梓 (にし あずさ) ニビルのオーナー。黒い長髪が美しい穏やかな感じの美女 川原とは相思相愛の中だが、今現在は忙し過ぎる川原の事を思い、結婚迄には至っていない模様 目を患っており、眼球の交換手術をするかどうか迷っている 川原の代わりに、「クイントス」に色々と便宜を図ってやっている様だ 20代後半くらいと思われる 妄想神姫の槇野 梓と名前が同じなのは筆者の不注意による偶然である(出番が少ない上に存在感が希薄なのでそれ程混乱する事は少ないと思うが、ヌルから「梓姉さま」と呼ばれる為、相当ややこしい・・・) 巨乳だが、腰と尻にエロスが足りないというのが、武士と琥珀の共通見解である 深町 昭 (ふかまち あきら) ウインダムのオーナー どちらかというと愛玩派に分類される平和主義者。毒にも薬にもならない優男だが、正義感が強い 皆川とは高校時代からの付き合いらしい 彼女が居て、その彼女の兄、板垣哲郎も槙縞ランキングのランカーである・・・どうも哲郎にそそのかされて武装神姫の魔道に嵌った様だw 皆川 彰人 (みなかわ あきと) キャロラインの現在のオーナーで、槙縞玩具店の店長代理。 深町の高校時代の先輩で、哲郎、深町、キャロと話す時だけタメ口 どう見ても悪役面だが、実際に悪役なのかもしれない。CV小西克幸 川原 正紀 (かわら まさき) クイントスのオーナー 元はフリーのルポライターだか何だかのロン毛のにーちゃんだが、現在は「神姫に人権を認めさせる運動」をしている団体のメンバーとして日本中を駆け回っている 剣は紅い花の誇り
https://w.atwiki.jp/shinkiss_matome/pages/1926.html
「……3Sが斬る、なし崩しに始まり」 「今回は某企画に便乗して、ブレザーバージョンでお送りします」 「さすがにこのような服装は、気恥ずかしいですねワン」 「こういう時に言うべき台詞は二つに一つ」 「ほう?」 「と言いますとワン?」 「『七五三みたい』か、『どこのふーぞく?』」 「……どちらに該当すると言いたいのでしょうか?」 「言わぬが花」 「テッコさん、あとでじっくり話し合いましょうかワン」 「ええ、私も同席させていただきます。 それはそれとしまして、ですね。 それでせっかくの学校シチュエーションです、なにか学校っぽい事をやってみましょう」 「それはよいお考えですワン」 「(ぱちぱち)」 「それで、学校らしい事といいますとワン? 恥ずかしながら私は、既に社会人であるマスターの元に迎えられたため、学校と言う環境にはとんと馴染みがありませんでしてワン」 「そこはそれ、現役学生マスターをもつ私たちにお任せあれ」 「(えっへん)」 「おおー、頼もしい限りですワン。それで、具体的にはワン?」 「学校らしい事……不良のいじめ?」 「ああ、そうですね。そしてその不良も、教師側から煙たがれて事あるごとに退学させようと目論まれているという悪意の連鎖など定番ですね」 「そこから学級崩壊」 「そのまえに、登校拒否も忘れてはいけません」 「……うっかり」 「いえあの、学校と言う環境はもう少し穏便な場所ではないかと思いますがワン……」 「むむ?」 「ですが、マスターが学校に行ってる間に、私が暇潰しで見る学園ドラマなどは、多かれ少なかれこのような筋のものばかりですが?」 「(うんうん)」 「つまりあなた方も、学校の実情にはそれほど詳しくないとワン」 「なんでバレたのですか!」 「びっくり」 「……いえ、まぁ、その件は置いておくとしましてワン…… そうですね、無難なところで授業のマネなどをやってみましょうかワン」 「無難ですね、無難すぎます。なにかこう、ぐっと来るものがないと取り残されますよ」 「若者には無茶が必要」 「そこは素直に頷いておいてください、話が進みませんからワン……」 「ち、仕方ありませんね」 「一つ貸し」 「恩を押し付けられましたワン?! 気を取り直して……そうですね、国語でもしてみてはいかがでしょうワン」 「国語、ですか?」 「ええ、以前『秋物に凝ってナマズの服』などという、ひどい慣用表現を使った方もいますことですしワン」 「ナニソレ犬丸? 『羹に懲りて膾を吹く』の積もり? ありえない。ひどすぎ。ひょっとしてギャグ?」 「……今私は、非常に理不尽な気持ちを味わっていますワン」 「まぁまぁ。それじゃあ一つテキトーに、研究発表チックに慣用句についてでも語って見ましょうか」 「(こっくり)」 「ではそういうことでワン」 「言いだしっぺと言うことで、まずは私からいきましょう。そうですね…… 『情けは人のためならず』について」 「「(ぱちぱち)」」 「この慣用表現は、『安易に情けをかけると、その人のためにならない』と言う意味…… と、勘違いされることが多いですね」 「(うんうん)」 「おおー、お見事ですワン。まさにそのとおりですワン」 「ポイントは、『自分に返って来る』ということ。この要素を加味すれば、答えはおのずと見えてきます」 「隙の無い論理展開ですワン」 「やる……!」 「すなわち! この慣用表現の真の意味は、『反撃を受けないために、止めは刺せる時に容赦なく刺せ、それこそが慈悲』だと!」 「我々武装神姫には、必要な心構えですねワン」 「(うんうん)」 「スナイパーである私にとっては、特に重要な事です」 「お見事ですサラ(仮)さん」 「お疲れ」 「さて、では次は誰が行きますか?」 「(挙手)」 「おお、テッコさんが積極的ですワン」 「これは期待できそうですね」 「……『船頭多くして船山に登る』……」 「ほほう、それで来ましたかワン」 「それで、その心は?」 「『皆で力を合わせれば、一見不可能な事だって実現できる!』(握り拳)」 「うんうん、よい言葉です」 「もとより我ら武装神姫、マスターとの二人三脚が大前提ですワン」 「協力、とても大事」 「まさか、この殺伐が持ち味のこのコーナーで、こんな感慨深い言葉を聞けるとは」 「やりますねテッコさん」 「(えっへん)……最後、犬丸」 「承りましたワン。見事取りを務めてご覧に入れましょうワン。 では、私は……『死中に活を求める』について語らせていただきますワン」 「期待していますよ」 「がんばれ」 「ありがとうございますワン。 それで『死中に活を求める』はですね……かつてとあるスポーツ選手が試合前にトンカツとシチューを食べるのが定番だったのですが、ある日時間がなかった時に、店主に頼んでカツをシチューに入れてもって来て貰ったのですワン。 それを見た店主は、煮込み料理と揚げ物を組み合わせる着想を得て、そこから大ヒット商品……いえ今では定番と言うべきカツカレーを生み出したという故事に基づく、窮地においても最後まで諦めない事でそこから逆にチャンスを得ることを言います」 「最後まで諦めない事、これもまた我々には重要な事ですね」 「昔の偉い人は言った……『諦めたら、そこで試合終了だよ』」 「ご清聴ありがとうございましたワン、お粗末さまでしたワン」 「お疲れ」 「なんだか今回の3Sは、きれいにまとまりましたね」 「たまにはこういうことがあってもよろしいかとワン」 「(うんうん)」 (和やかな笑い声が満ち、それが徐々にフェードアウトしていく) 「……えーと」 「……うーん」 「ええと……これ、ツッコんだら負けとか、そういうゲーム?」 「そう、なのかもしれませんねぇ、もしかしたら……?」 「『情けは人のためならず』は、『誰かに優しくした事は、巡り巡って自分に返ってくる』という意味だね。 『船頭多くして船山に登る』は、『皆があれこれ口出しして、事態がとんでもない方向に行ってしまう』こと。 『死中に活を求める』は意味としては合ってるけど、説明されてる成立エピソードは、普通にカツカレーの起源として有力視されてる説だね。もっともそれでは、シチューじゃなくて普通にカレーとカツの注文だけど」 「ツッコミいったー!」 「しかも詳細に!」 「え? なに? 何かまずかったかな?」 「いえ、その、まずいというわけでもないんですが……」 「朴念仁て、時としてものすごく強いわねぇ……」 「ええ……」 「?」 <戻る> <進む> 犬子さんの土下座ライフ。 クラブハンド・フォートブラッグ 鋼の心 ~Eisen Herz~
https://w.atwiki.jp/shinkiss_matome/pages/674.html
第五幕。上幕。 ・・・。 新京都国際会館大ホール。薄暗い照明、設置された数台の大型筐体。 交差する小さな影を見つめる瞳。 筐体のカップホルダー。そこに描かれたMBAというオフィシャルロゴの上。 無造作に置かれたレモンイエローのケータイには大小様々なストラップが賑やかに吊るされている。 そのプレイヤーシートに座る少女。染色された髪の前髪の一部にホワイトメッシュ。細い赤縁の洒落た眼鏡。インカムを付けている耳には右には2つ、左に1つ賑やかにピアスが踊る。 その筐体の中・・・アラートウィンドウと光が踊る戦場を見つめる横顔は、軽薄そうにも見えるが、その視線は真剣そのもの。その瞳には少しの不安と自信が宿るが、絆創膏が貼られた両手を祈るように組んで、彼女はそこをじっと見続けていた。 彼女の名は山県 光。アキと読む。 やがて。 砲台型神姫フォートブラッグが携えた、大きく形状を改造されたライフルの銃弾が悪魔型ストラーフの胸部急所に直撃した。 ドクロのマークのデッドマークが赤く表示され、悔しそうな顔を浮かべながらストラーフが膝をつく。勝利を収めたフォートブラッグはバイザーを上げ、特別感慨も無さそうに・・・それが当然と言うかのように敵であった者に一瞥をくれると。自身のバトルフィールドへの侵入ゲートへ足を向けた。 『バトルロンドエンド。勝者、フォートブラッグ『ルクス』。OFMBA・・・勝敗数・・・』 電子音声と、その戦いのギャラリーであった『ライバル達』の拍手が流れる中。 そのフォートブラッグ『ルクス』は、白と黒だけで彩られた世界を見回した。 いつも通りの視界。ノイズが少し混じっているままで。 「お疲れ様。ナイスやったで、ルクス!」 関西弁が強く混じった声。嬉しそうに、アキが自分のパートナーを迎える。 「・・・ありがとうございます」 そのマスターの祝福に顔さえ上げず、腕を組み。淡々と答えるルクス。 今の戦いに満足してはいないのか、目を軽く閉じ瞑想しているかのように口はそのまま噤まれた。その喜びを表現しようともしない姿に、困ったような笑みを浮かべながら、アキが慌てて付け加える。 「あ・・・うん。どっか、壊れたとか。調子の悪いトコとか無い?」 「マスター。異常ありません」 さらっと答え、ルクスは心配そうな彼女の声を無視する。 まだ何かを言おうとしたアキだが、先のストラーフのマスターが来て、挨拶と祝福への礼を言う事に追われ、それ以上の声をかける事は出来なかった。 自分は武装神姫である。 マスターと自分の誇りの為に戦い、勝利を収める為の存在。 特にフォートブラッグは本格的なショットバトルの為に設計された『砲台型』。主とは完全にバトルパートナーとして在るべきだと、彼女は『正しく認識』していた。 主が戦略を練り、自身が戦術で勝利を収める。それこそが正しい姿である。幸いにもアキは戦略という点では問題は無い。ならば自分にはそれに答える義務がある。 そこに間違いなど・・・。 それから一時間後。これで勝てばベスト4という試合が始まった。敵はアーンヴァルタイプ限定型のカスタムモデル・・・それも随分と神戸で名の知れた実力者。 しかし此処で負けているわけにはいかない。 その戦闘の途中。 彼女は一瞬、丘陵の段差に足を取られた。 ほんのワンミスでしかない。 しかし、この戦場には、『ここまで勝ち上がってきた者』しかフィールド内にはいないのだ。それを見逃すはずもないアーンヴァルのアルヴォが火を噴き、彼女のバイザーを跳ね上げた。幸い、直撃ではなかったが・・・。 「・・・っ!」 ヂヂッという音と共に、目の前に妙な火花が舞った。いや、目の中で舞った。 視界が急速な勢いで萎み、これまでの三分の一程度まで縮小する。ダメージアラートが表示されているはずだが、それを完全に見る事が出来ない。 (ダメージ数の把握が・・・!) 見えなくなりつつある事よりも、彼女は戦闘に支障をきたす事を悔やんだ。残った視界にも大きなノイズが走っている。最早、視界のほとんどが奪われつつる状況。それでもルクスは敵をスコープに入れようとする。 (負けるわけには!) が、目が見えない重砲撃タイプなど単なる的に過ぎない。 数秒後に放たれたレーザーライフルを回避する事が出来ず、ルクスは直撃をくらった。全身から力が抜けていく。高いブザー音と共に、彼女のボディに敗北を意味するドクロが舞った。 あちこちにガツ、ゴツとぶつかりながらも、何とかルクスはゲートに辿り着いて筐体から出る。火花はまだ目の中で散っていた。 「ルクス!?」 慌てたような声が聞こえる。そこにいるのだろう。 彼女はいつも通り、視線を主に向けずに首を振った。 「申し訳ございません、マスター。私のミスで敗北しました。弁明の言葉もありません」 「そんなんはえぇねん! それより・・・大丈夫なんか!?」 何が、いいのか・・・。 オフィシャル・プロを目指しているような方が。 「異常といえば、視力が奪われました」 恥だ。主の構想を裏切り、自身のミスで負けただけではなく。挙句故障とは。何という役立たずな・・・。 そこまで思った時には。アキはルクスを引っ掴み、メディックルームに走っていた。 「・・・ありがとう、ございました」 搬送された神姫センターから、暗い表情でアキがルクスを胸に抱いて出てくる。 「・・・」 結果は・・・『ノー』だった。 そもそもが、彼女の人工眼球が、武装神姫の物ではなかったという衝撃の事実付きで。 パーツの混入・・・数百分の一か、数千か、数万か。何が起きたかは解らないが、しかし確かに起こりえた。彼女の眼は旧型神姫タイプ『ミネルヴァ』の不良品であったのだ。 武装神姫のカメラアイ部は、従来の神姫よりもガードグラスが遥かに丈夫に出来ており、それ故に人工眼球とCSCセンサーとの結合も強固になっている。ルクスが・・・生まれながらに持っていた障害をアキに伝えていれば、その時点での良品への変更は可能であっただろうと。 彼女は当初から視界が色を認識していなかった。 だが、ルクスは別段それを主であるアキに言おうともしなかったし、不便とも感じなかったのだ。全てはバトルに、戦闘に・・・必要ないからと。 その『悪い眼』でずっと暮らし、戦ってきたルクスのCSCが既に『その規格の眼球』を自身の目とする認識を、終了してしまっていた。 新品の武装神姫の眼の規格では、彼女のCSCがデータを認識しない。 とはいえ『悪い眼』と同じ程度の格である『旧式の眼』はほとんどがハンドメイドの代物だ。色も違えば、一つ一つが微妙にセッティングが違い、合う物が見つかる可能性は限りなく低いと・・・そう、伝えられた。 「・・・なんで、言わんかったん?」 合う物が見つかれば、連絡をくれると気の毒そうにドクターは言ってくれたが。期待は出来ない。 アキの言葉に、抱かれたルクスは俯いたまま何も言わなかった。 「なんで・・・色が見えないって、言わなかったん? ルクス」 もう一度。それでもどこまでも優しく、アキは言う。それが妙に苛立たしく感じられ、ルクスは僅かながら乱暴に答えた。 「必要ないと判断しました。バトルに影響はなく。むしろ、色の彩度に目を取られないだけ便利であろうと」 酷くなっていくノイズは。既に視界のほとんどを奪っている。 「そっか・・・ごめんな・・・気付かへんで」 ポツポツと聞こえる声。何故謝るのか。全ての非は私にある。 「マスターは悪くありません。状態管理・報告の義務さえ怠った、私の責任です」 「ウチは、マスターやのに・・・」 聞こえていないのか、アキは尚も呟くように言うだけだ。 ルクスは溜息をつき、淡々と言った。 「・・・マスター」 「?」 「私のCSC破棄を提案致します」 ぴたっと、足が止まった。 「え・・・?」 アキの顔さえ見ずに、ルクスは続ける。 「マスターはオフィシャル・プロを目指し、それに近い場所にいらっしゃいます。状態管理を損ない、無様にも・・・恐らくは視力を失うような神姫では貴女への期待と、高いステータスに答える働きは出来ません」 それが当然だ。 「CSCを一度破棄し、新しい眼球に取替え、そして再度起動を行ってください。名はルクスでも構わないでしょう。同一ボディとヘッドパーツならば特例としてランキング継承が認められた例があります」 私は彼女の神姫・・・所有物であり、期待に答える義務があった。 それが出来ない愚かな存在が、これ以上、類稀なる才能を持つ方の側にいる訳にはいかない。 「何・・・言って」 アキの震える声。ルクスは首を振って溜息混じりにはっきりと言った。 (・・・何を感傷的になっておられますか) 「私と貴女はパートナー。片方が『裏切り』に近い行為を行った時、貴女には切り捨てる権利があり、私にはソレを受け入れる義務がある。今日とて勝てば、日本選手権への切符を手に入れることが出来たベスト4入りを逃したのは、私の責任です」 「『裏切り』・・・?」 「何よりも、マスターはフォートブラッグの戦い方・セッティングに慣れておられるでしょうし・・・」 そこまで言って、決定的に重要な事を言う。 「CSCと眼球のみでしたら、『コスト』も、抑えられますから」 「『裏切り』・・・? 『コスト』!?」 少し、語気が強められた。 「?」 「この・・・っ! ド阿呆おっ!!」 水がパタパタッとバイザーに降ってきた。きょとんとして、ルクスは見えなくなりつつある目を上に向けた。 白黒の、小さな視界に。泣いているアキがいた。 (・・・ぁ) そういえば・・・。 「ウチはルクスじゃないと意味がない! ルクスの代わりなんておらん!」 「代わりは・・・」 私は、武装神姫。大量に生産されているタイプ。代わりなんて。 「ルクスが、好きやから! 一緒に来たのに! 裏切りなんてありえへん!! ルクスはルクスやのに、何でそんな事言うん!?」 大粒の涙が眼鏡を濡らし、首を振った時に零れ落ちる。 (・・・好き?) 泣きながら叫ぶアキを呆然と見つめながら、言葉を反芻する。 そういえば・・・マスターの顔を正面から見たのは、はじめてだったっけ・・・。 紫電が舞った。耳に届くブチッという音と共に。 視界から光が、完全に失われた。 ・・・一週間後。 昨夜、『データ規格に一致するかもしれない』眼があると電話があり、そこに連絡を入れるや平日にも関わらず、アキはルクスを連れて早朝からリニアエクスプレスに飛び乗った。 新京都駅からの通勤の人たちに混じって揺られる事一時間と少し。中央ステーションからバスに乗り換えて。 そして。彼女達はそこに降り立った。 「きょう、こく・・・?」 この一週間。泣き腫らした目でアキは、その珍しい名前をした研究所の看板を読む。ルクスは無言で俯き、そのポシェットの中で座っている。 千葉峡国神姫研究所。それなりに大型の研究所らしい。 意を決して。彼女は呼び鈴を鳴らした。 この一週間。 ルクスは一人暮らしをしているアキの部屋、机の上。言葉さえ発せず、クレイドルの上にずっと座っていた。座らされていたし、そこから動こうともしなかった。 毎朝、声をかけながらアキは優しくルクスの身体を払う。 「ごめんな・・・ごめんな?」 そう謝りながら・・・学校には行っているか解らない。 時折、机に突っ伏しているのか、くぐもった涙交じりの声が近くから聞こえるだけで。 ただ。 ルクスは、何か一つのキーワードを探し続けていた。 この、胸を蹂躙する気持ちを、はっきりとさせるワードが。あるはずなのに。 「・・・。結論から言えば。移植は可能です。それで光が戻るかは確信はありませんが・・・確率的には半々と言った所でしょうか」 様々な機械でデータを取り、その後所長室に通されたアキとルクス。 その前に座った、堅苦しそうな雰囲気を漂わせる小幡 紗枝と名乗った初老の女性は、手元のデータファイルに目を通しながら事務的な口調で言った。 「半、々・・・」 アキはぽつっと呟いて。 「あの、それで・・・」 「無論。一人でも多くの神姫と、そのマスターをお救いするのが私達の使命でもあります。お譲り致しましょう。・・・治療費は、別途頂くかもしれませんが」 「ホンマですか?」 嬉しそうに言うアキに、しかし小幡は冷静・・・冷徹とも見える表情のまま一つ頷くと、机上に直立するルクスに視線を向けた。 「さて、ルクスさん。貴女に聞いておきたい事があります」 ルクスは顔を声のする方向へ向ける。 「視力を失う前兆は当初からあったとの事ですが・・・何故、貴女は。色彩を認識していない旨をマスターに伝えなかったのですか?」 ふっと顔を下を向けたまま、答える事が出来ない。彼女は質問を理解はしていたが、それどころではなかったのだ。 ずっと探している。その単語を。今も心中を漁って。 「ウチの・・・。ウチのせいです!」 何も言わない彼女に慌てたように、アキが叫んだ。 ゆっくりと、声がした方に顔を向ける。 (マスター?) 「・・・ウチが・・・ルクスに無理をさせすぎて」 一週間聞き続けた、涙声に変わっていく声。 「構ってあげれなくて・・・そんで・・・彼女の事を何も考えてあげれなくて。色が見えてないって事さえも、気付いてあげられへんかったのは・・・」 絞り出すような声。 (何の為に・・・) 「全部・・・」 どうして? 「なるほど。・・・今の話が本当として。さて、貴女には、彼女を恨む権利があります」 別の方向から、小幡の冷静極まりない声が聞こえた。 「・・・。・・・!」 ルクスは『恨む』という単語に驚いて顔を振り向ける。 「ルクスさん? 神姫の不調さえ気付かず、戦いを強い、視力を奪い去った彼女を。それでも赦すのですね?」 それは。 赦す・・・? 「当然ですよね。貴女は、彼女の神姫なのだから」 「そ、それは! ちゃいます! ウチは!」 驚いたような、アキの声。 「お黙りなさい、山県さん」 それを封じる、厳しく、冷たい声。 「・・・これは、貴女の問題でもありますが、同時に彼女の問題でもあるのですよ?」 情に流されぬ研究者の声。 「どうですか? ・・・ルクスさん」 「・・・」 アキの、漏れるような声だけ、聞こえている沈黙の中。 (・・・あ) ルクスは、ようやく『一つの単語』に辿り着いた。 「・・・『光を失う』事」 質問の回答になっていない言葉を、彼女は紡いだ。 「これは、私への罰。・・・マスターの顔さえ直視せず。その声から耳を塞ぎ・・・『それ』から逃げ続けた」 直立したまま、淡々と。感情がほとんど込もっていない声で続ける。 「私は・・・『それ』を受け止めようとしなかった」 ふっと、自分の声調が変わった。 「大好きなネイルアートをやめてしまわれた。・・・髪が、傷つくからと」 それは誰の為に。 「パーツを持った事も無いドライバーで分解し、綺麗に洗ってくれたのも。ハンドカスタムしようとして。絆創膏だらけになってしまった指先も」 一体誰の為だったか。 「初勝利のときに誰よりも喜んでくれたのも。時間が無いのにアルバイトをして、兵装をフルチェックに出してくれたのも」 全ては。誰の為だった? 「・・・。そんな事を、何も考えずに受け止め。それが当然だと甘えながら」 それら全ては。誰に向けられていた? 「マスターの声に耳を傾けず、その瞳を真っ直ぐ見る事さえ出来ない・・・こんな」 声が揺れていた。とめどない感情の奔流が口から流れ出す。 ルクスは膝から崩れ落ち、その場にへたり込んだ。 何も見えぬ闇の世界。冷たい机の堅さだけが、足から伝わってくる。 「本当に救いようの無い、愚かな神姫の為に」 マスターは。私に。 どれほどの『それ』を注いでくれていたのか。そんな事さえ考えもしない神姫の為に。 「私は・・・」 光を照り返さない瞳を天に向ける。それも空しき抗いに過ぎず、涙が目から零れ落ちた。 「私は、きっと。愛されていた」 『愛』。 そんな簡単な単語を導くために。一体、どれほどの時間が必要だったのか。 雫が落ちる音が聞こえる。それは、誰の涙なのか。ようやく彼女は、全てを認識した。 「この光を失う事は。その愛を踏み躙り、目を伏せ続けた。愚かな私への罰」 「・・・。受け入れると?」 冷たくこちらを刺す様な小幡の声。ルクスは小さく頷き。唇をわななかせた。 当然の罰。受けるべき刑・・・。 「・・・それでも」 メモリーを埋め尽くす、最後に見た映像。 彼女は・・・マスターは。 「それでも・・・私はっ!」 何も掴めぬ指で見えぬ目を閉じ顔を覆う。消えない。その映像は消えはしない。 はじめて・・・そう、はじめて真っ直ぐに見詰め合った、陽の如き愛を注いでくれたマスターは。 泣いていたのだ。 こんな、愚か者の為に。 「マスターの姿を・・・失いたくないっ!!」 泣いていたのだ! こんな、『愛』を『涙』にしか換える事が出来ない、ガラクタの為に! このまま光を失えば。自分は、ずっとずっと知らないまま。 泣いていない、哀しみに囚われていないマスターの顔を。 愛を与え続けてくれた、いつも自分へ向けてくれていたはずの、唯一無二のマスターの顔を! 「う・・・う、ひぐっ・・・。マスタ・・・マスタぁ!」 心が無茶苦茶に掻き乱されていく。氾濫する感情。 メモリーを埋め尽くすのはアキの泣き顔。姿を見る事さえ適わぬ主を、彼女は叫ぶように呼ぶ。 あの泣き顔が・・・与えてくれた愛に出した答え。あの涙が、愛の代価として私がマスターに与えた物だ! 身を引き裂くほどの後悔と懺悔。ルクスは両手を地に付いた。 「ごめん、なさい。ごめんなさい・・・っ!」 吐き出された『想い』。赦されるとは思っていない。赦されるはずなんてない。 自身がやってきた事。自身が口にした言葉。 その須らくが、愛への『裏切り』に他ならなかった。 何本の棘をマスターの心に叩き込んだ? 果たして、どれだけの愛を捨ててきたのか? どれほどの愛を踏み躙ったのか! 考えただけで心が押し潰されそうな罪。 身動きさえ取れないルクスを、誰かがそっと抱き上げた。 「・・・。マスター・・・?」 知っているコロンの香りに、彼女は、ぽつりと呼んだ。 「・・・」 しゃくり上げる声。何も言わず。アキはルクスをぎゅっと胸に抱いた。 暖かい。知っている匂いと温もり。 ・・・初めて起動した時に、抱き上げてくれた時と同じ。 あの頃から・・・この、こんな神姫に・・・この人は、『愛』を注いでくれていたのに。 彼女は咽び泣いた。ごめんなさいと、ただ繰り返しながら。 「小幡、さん」 泣き続ける彼女を抱きながら、自身も涙でボロボロの顔を、アキは小幡に向けた。 「・・・。解りました」 小幡は静かに頷き、微笑を浮かべた。 「彼女に・・・良い『名』を、お付けになりましたね。山県さん」 「・・・! はい」 ルクスを抱き締めたアキを、小幡は奥の部屋に誘った。 再起動音が自分の耳の奥で鳴っている。とすれば。これは、夢、だろうか。 ゆっくりと眼を開ける一瞬前。ルクスは不思議な光景を見た。 どこまでも続く、晴れた風吹く草原。そこに立つ彼女の前に、一人の美しい神姫が髪を風に揺らせ立っている。 翠の髪。そして、銀色の瞳。パールと草色のスーツカラー。 その神姫はルクスに優しく微笑みかけていた。 『・・・母様?』 ふと自然と出た、その言葉。 風が吹き、草原が消えていった。 高い電子音が一度鳴る。 その瞳の色は銀色に変わっていた。焦点が合い、部屋を視界に映し出す。 「ルクスっ!?」 覗きこむ、心配そうな顔。 ルクスは小さく頷いた。 ぱっと、アキが笑顔に変わる。 (あぁ・・・) 赤い縁の洒落た眼鏡。 染めた髪にメッシュが入って何と鮮やかな。 銀のピアスで賑やかな耳元。 どことなく日本人とは違う印象を与える、顔立ち。 「マスター」 私は、こんなに近くにあった愛を。長く、見ようともしなかったのか。 「見えるな? 見えるんやな!?」 「はい・・・」 これほどまでに。美しい愛の姿を。 「・・・はい、マスター。異常ありません」 そう言い終わったときには。強く、胸に抱きしめられていた。 空はどこまでも蒼く、遠く千切れたような白い雲。 グレーのアスファルト。走る色とりどりの電気自動車。街路樹は緑の葉を萌やし、金の木漏れ日を落としている。 歩く、黒い影。肩に小さな影。 目に映る、初めての世界の色。 「ゼリスさんかぁ・・・凄いヒトもいるねんなぁ」 「はい」 あの後ディスクを見て、この『瞳』が誰の物かを知った。 きっと。夢の中で思わず口走った言葉は・・・決して間違いではなかった。 「・・・重いね」 「はい」 「頑張らな、アカンね」 「はい。マスター」 こちらに向けられた視線を真っ直ぐに見返し、ルクスは頷いて見せた。アキも嬉しげに頷き返す。 ただそれだけ。こんなに簡単な事が。今まで出来なかったのか・・・。 胸の奥でCSCが揺れて、心が熱くなる。 「・・・ん? メール?」 開いたケータイに目をやったアキの表情が一変する。 「しもたっ・・・今日絶対受講の講義が七限にあるんやったっけ。間に合うかな!?」 「・・・。時間的に一時間後までにラピッド=エクスプレスに乗れば間に合います。急ぎましょう」 脳内で時間割を的確に展開、計算してルクスはアドバイスを送る。 「・・・マスター」 「ん?」 「私の名に・・・何か、意味があるのですか?」 恐縮するようにルクスは聞く。 小幡が言っていた言葉が気になっていた。『良い名』とは。如何なる意味なのか。 「あ・・・『ルクス』ってのはな」 ストラップだらけのケータイをポケットに捻じ込むと、アキは嬉しげに笑って見せた。 「ウチと、同じ」 「?」 「『光』っていう意味やねん」 風が、吹き抜けた。 「よし、バス停まで走るで!」 「・・・。はい、マスター」 しっかりと服に掴まる。放さないように。そして離れないように。 銀の瞳をビルの間に見える天に向け、涙を浮かべている事に、気付かれないように祈りながら。 ・・・。 この愛は私には大きすぎる。 この光は私には眩しすぎる。 それでも。 こんな愚かな、ド阿呆と・・・怒られるような神姫でも。 貴女の『愛』を、『笑顔』に換えられる様に。 ・・・愛していこう、ずっと。 光溢れる天よりの旋風。鳥、舞い降りるその一迅。 海には波を誘い。空には雲を呼び。その髪を遊んで吹き抜ける。 第五幕。下幕。 第五間幕
https://w.atwiki.jp/shinkiss_matome/pages/2429.html
第2部 「ミッドナイトブルー」 第2話 「night-2」 西暦2041年 5月21日 12:00 『大阪府 大阪市 鶴見緑地センター店』 お昼のチャイムが公園内に響く。 園内の噴水広場の軽食コーナー、そこでは多種多様な神姫とオーナーたちが昼飯を食べて雑談をしていた。 オーナー1「おい、知ってるか?昨日の夜出たらしいぜ」 オーナー2「出たって何が?」 天使型「例の都市伝説ですね」 サソリ型「12時の死神か・・・」 悪魔型「ええーーーほ、本当?」 オーナー3「ついにこの神姫センターにも、来たか」 種型「なんでも灰色艦隊の巡洋戦艦型神姫が半数以上撃沈されたらしい」 花型「ひゃーーー恐ろしい恐ろしい」 オーナー4「あの成金艦隊か?実力は低いだろ」 スプーン型「ですが、腐っても戦艦型神姫、それをわずか数分で半滅させたのですから・・・」 オーナー5「12時の死神、あれって実在するのか?よくあるゴーストファイターだろ?」 雑談に花を咲かせるオーナーたちに1枚のぼやけた写真が投げ込まれた。 オーナー1「!?なんだこりゃ」 野木「奴は実在する。これがやつの写真だ。私の重巡が撮影した」 野木が生き残った艦隊を引き連れてテーブルに座る。 ゴーンゴーンゴーン・・・ 低いエンジンを唸らせて灰色艦隊で生き残った3隻の戦艦型神姫が噴水広場の上空に現れる。 悪魔型が目を細めて艦隊を見上げる。 悪魔型「1、2、3・・・たった3隻?おいおいまじかよ!!」 オーナー4「ぶっ・・・ほ、本当か?」 野木は手に持った缶コーヒーを飲む。 野木「一瞬だった、時間にして5分もかかっていなかったな、みんな一撃で撃沈された」 ワシ型「これがその写真ですね」 野木から渡された写真を囲んで数体の神姫が騒ぐ。 天使型「ぼやけていてよく分からないですね」 サソリ型「真っ黒な武装神姫だ」 スプーン型「こんな神姫見たことないです」 ワシ型「私もです」 建機型「戦艦型を一撃で破壊できるんですから、有名な神姫ではないのですか?」 オーナー5「おい、お前知ってるか?こいつ」 オーナー2「ノン」 野木「そいつは戦艦並の大口径砲と強力な大型ミサイルを装備していた。レーダー、センサーには映らないステルス機だ」 ヴィクトリア「こいつは夜間戦闘に特化した重夜戦、重夜間戦闘機型神姫です」 マキシマ「すれちがいざまにドカン!!速度も速い」 ノザッパ「姿さえさだかじゃねえ!!あいつは化け物だ!!」 生き残った3隻の戦艦型神姫たちは周りによってきた神姫たちに戦闘の様子を話す。 悪魔型「ひええ・・・」 戦闘機型「これは夜中のバトルロンドは出ないほうがいいですね」 犬型「夜中の12時に出没する神姫・・・どこかで聞いたことがあるような・・・」 ???「そいつは夜帝だよ」 軽食コーナーの端で老人とチェスを打っている黒い軍服を着た将校型神姫がぼつりとつぶやく。 □将校型MMS 「ナターリャ」 SSSランク「演算」 オーナー名「伊藤 勝成」♂ 70歳 職業 古物商店主 天使型「夜帝?」 オーナー2「なんだそりゃ?」 サソリ型「ナターリャさん、知っているんですか?」 ナターリャはマスターとチェスをしながら答える。 ナターリャ「夜間重戦闘機型「シュヴァル」 SSSランク 二つ名 「夜帝」・・・バトルロンドでは彼女は夜中にしか出没しない、相手をほとんど一撃であっという間にすれ違いざまに撃破していくので姿を見ることも難しく。倒された神姫は相手の姿を見ることが出来ない・・・貴様らの話を聞いて、こいつしか思い浮かばないな・・・カタリナ社製の重夜間戦闘機だ」 一人のオーナーが慌ててノートパソコンで夜間重戦闘機型MMSと検索する。 オーナー7「夜間重戦闘機型!出たぞ!!こいつだ!!」 オーナーや神姫がノートパソコンを覗き込む。 カタリナ社の公式MMSカタログに画像とスペックが載っていた。 :夜間重戦闘機型MMS「ブラック・セイヴァー」 カタリナ社 第3開発局製 主兵装 3.5mm素粒子砲 2門 レーザーバルカン砲 6門 マイクロミサイルランチャー 2基 思考性巡航ミサイル 4発 チャフフレア 夜間戦闘を主軸に置いたステルス重戦闘神姫。モチーフは第二次世界大戦中の双発の大型夜間戦闘機群。運用方法も参考に開発。 強力な素粒子エンジンを5基搭載し武装は非常に強力、リアパーツ部に長大な素粒子砲を搭載。素粒子砲は熱量が高いので抑えることができるように特殊な液冷却装置が組み込まれ、高い威力を持ちながらも連射することが可能。一撃で戦艦クラスの神姫も撃沈可能な高い命中率を誇る神姫サイズの大型思考性巡航ミサイルを最大4発搭載可能。それらの強力な火器を正確に命中させることができるように全身にレーダーやセンサーが点在しており、電子戦も得意。全身真っ黒なのはステルス塗料を塗ってあるため。 重武装、高速航行、重装甲の戦闘可変航空神姫であったが、重量級の機体のため旋回性能は劣悪で、ドックファイトを挑まれると、どうしても大回りになってしまい横転性能も鈍い、本機は一航行戦闘の一撃離脱戦法に徹した戦い方を行うことを想定している。 本MMSは、完全受注生産MMSです。ご発注の際は最寄のMMSショップ、もしくはMMS取り扱いのある機械工具商までお問い合わせ下さい。 画像には全身真っ黒で強力な武装を多数備えた凶悪なフォルムの神姫の写真が写っていた。 悪魔型「な、なんじゃこりゃあああああ!!!」 天使型「完全受注生産型の高級神姫じゃないですか」 種型「こいつですかーうわーーーこれは、ちょっと・・・」 ワシ型「こんな神姫がいるんですか・・・」 オーナー3「野木、こいつか?やられたのは」 野木「・・・・ああ、こいつだ、間違いない」 マキシマ「そうだ、こいつだ!!」 ノザッパ「こいつにみんなやられたんだ!!!」 ヴィクトリア「うううむ・・・」 画像を見た神姫たちは口々にうなる。 ナターリャ「この界隈でそいつを使いこなして、真夜中に暴れまれ廻っている神姫といえばSSS級の強ランカー神姫、『夜帝』だな・・・そいつは夜中の12時にしか現れない」 ナターリャは、すっとワインを口に運ぶ。 野木「情報ありがとう」 ナターリャ「気にするな、その程度のこと」 オーナー2「こんな奴が夜中に出るんじゃ、深夜のバトルロンドは出ないほうがいいな」 オーナー3「というか、深夜の12時ってバトルロンドの利用数が一番少ない時間帯じゃね?あんまり被害って・・・ないような気が・・・」 スプーン型「ですよねーほっておいてもいいような気が・・・」 ワシ型「うん、私もそう思います」 ナターリャは、すっとチェスの駒を指す。 ナターリャ「・・・夜の12時は彼女の統べる世界か・・・噂は本当だな」 野木「・・・どういう意味だ?」 ナターリャ「そのままの意味さ、奴の二つ名は『夜帝』・・・夜の帝王だ。普通の神姫たちは視界が良好な日中や遅くて夕方の戦闘に慣れており真っ黒闇の真夜にはヨタヨタと彷徨うのが精一杯が関の山。それに大して彼女は最初の設計開発の段階から夜間戦闘を念頭に置いた武装構成で優秀なレーダー電子装置とステルス装備を搭載しており、彼女に夜間戦闘を挑むのは自殺行為に等しい。だから誰も奴が出ると噂される夜の12時には出歩かない・・・本当に強い神姫ってのはな、戦う前から相手を力で潰すんだ・・・戦闘行為自体を思いとどまらせる力・・・抑止力という見えない力を持っている・・・・言っている意味分かるか?」 野木「くっ・・・ずいぶんと辛口だな」 ナターリャ「事実を言ったまでさ、実際、そのとおりだしな」 野木は周りを見るとほとんどのオーナーや神姫たちが戦う前からコイツには勝てない、夜中には出歩かないようにしようと騒いでいる。 野木「ふん、いまいましい!!」 ヴィクトリア「さてと・・・私たちはどうしますか?マスター」 野木「どうするとは?」 ヴィクトリア「このまま、コソコソと夜中の12時以降に出歩くのをやめますか?」 ノザッパ「それこそ、奴の強さを証明してしまう」 マキシマ「奴の手口が分かった!!反撃だ!」 野木「まて、落ち着け・・・そう簡単には・・・」 野木は躊躇する。やみくもに攻撃しても勝つ見込みは少ない、頭のいい参謀が考えた作戦がいる。 野木「・・・・ナターリャ」 ナターリャはマスターともくもくとチェスを打ち続けている。 ナターリャ「貴様が何を考えているか私は知っているが、私は力を貸さないぞ。私はこの通り、なんの武装も持たない・・・ただのチェス好きの神姫だ」 野木「力ではなく知恵が欲しい」 ナターリャ「らしいですが?閣下」 ナターリャのマスターの伊藤は重く口を開く。 伊藤「ナターリャ、このお嬢さんに協力して差し上げなさい」 ナターリャ「・・・失礼ですが、理由を教えてください」 伊藤「怖気づくほどの強い神姫がいる。それを倒すことに理由がいるのでしょうか?」 ナターリャ「了解しました。そして・・」 ナターリャはナイトをすっと動かしをクイーンを取る。 ナターリャ「チェックメイトです。閣下」 伊藤「クイーンが落ちたか、やはり切り札はナイトということで」 ナターリャ「チェスにおいてクイーンは最強ですが、ナイトは効果的に使えばクイーンを狩れます。駒が必要ですが・・・」 野木「バトルロンドはチェスのようにはいかないぞ」 ナターリャ「試してみますか?」 野木はニヤリと笑う。 野木「あは・・・あはっははっははは!!!面白い!!!!駒は私が用意しよう!!奴は今日も出ると思うか!?」 ナターリャ「・・・でますね」 野木「なら今日の夜11時、ここに集合しよう。駒は何がいる?」 ナターリャ「あなたの生き残りの重巡洋戦艦型神姫が2隻、完全装備の航空母艦型神姫が1隻とベテランの飛鳥タイプの戦闘機型が2機、ステルス戦闘機型が2機・・・あとはなんでもいいから8体ほどの武装神姫・・・こんなところか」 野木「1個機動MMS艦隊をまるごと用意しろというわけか」 ナターリャ「そういうことだ。おおげさだと思うか?」 野木「思わないな、奴を倒すにはそれくらいの覚悟がいるということだな」 ナターリャはうなずく。 ナターリャ「覚悟があるからといって勝つとは限らない。気合や根性で勝てるほど戦いは甘くない。勝つためにはなんでもやる。戦い方を教えてやろう・・・」 ナターリャはきゅっと深く帽子を被る。 To be continued・・・・・・・・ 次に進む>・第3話 「night-3」 前に戻る>・第1話 「night-1」 トップページに戻る
https://w.atwiki.jp/busou_bm2/pages/15.html
ここを確認する前に、必ず取扱説明書に目を通しておいてください。 DL版の説明書はXMB→ゲーム→メモステ→武装神姫BM→△ボタン→解説書にあります。 購入前Q このゲームってどんなゲーム? Q UMD版とDL版があるけど、どっちがいいの? Q 前作やってないけど大丈夫? Q 限定版があるらしいんだが Q そもそも武装神姫って何なの? Q 登場する神姫の数は? Q この武装何? 見た事無いんだけど Q 俺の好きな神姫が出てないんだが? 引き継ぎQ 引き継ぎに必要なものは? Q 前作とどれくらい違うの? Q 前作のDLCはどうやって引き継ぐの? ゲーム本編Q ○○に勝てないよ! Q ○○が装備できないんだけど?コスト制限もきついよ? Q ○○が入荷したのに売ってないよ? Q △△のパーツどこ?レールアクション揃わないよ? Q 手持ちのパーツが少なくて同時育成が難しいです。 Q 武装エディットの登録データが消えるんだけど? Q 武装エディットで総合アビリティ一覧があったら便利なのに。 Q 一回しか攻撃できない武器があるんだけど。 Q ハンディキャップ戦が難しすぎる。 Q LOVE上げの効率のいいところはどこ? Q F1行くための公式戦でないんだけど?/ファイアーバースト杯出ないんだけど? Q クラブ ヴァルハラ?裏バトル?やっていいの? Q ランク5以降の装備はどこで集めればいいの? Q:逆に低ランク武装が手に入らないんだけど… Q アストライアー(二戦目)が倒せない! Q 称号「闘神の玉座Mk2」の入手方法は? バトル以外Q イベントが進まないんだけど。 Q 同型の神姫って複数持てない?何か駄目とか言われたよ。 Q 神姫の名前変えたいんだけど。 / 武器や神姫の色って変更できない? Q 神姫とのイベント回想はないの? Q 神姫って何体まで買えるの? Q ライバルが上級者すぎるんだけど…。 Q 主人公って男性なの? Q 神姫が増えてくると名前をつけるのが大変なんだけど…。 Q 攻略本って…どう? 対戦関連Q アドパで対戦できる?kaiは? 購入前 Q このゲームってどんなゲーム? A 神姫を育成しつつ、様々な武装やパーツを集めて戦うアクションゲームです。 「アーマードコアのように武装変更できるガンダムvs」と例える人が多いようです。 Q UMD版とDL版があるけど、どっちがいいの? A 前作で不評だったロード時間の問題は、メディアインストール(537MB以上)機能により改善されています。 それでもまったく同じというわけではないため、youtube等にUPされている比較動画を見て気になる方はDL版の方がいいでしょう。 定価の場合、UMD版が5800円に対し、DL版が4800円と1000円安くなっています。 DL版は容量が前作よりもかなり増えているので(約1.4GB)、容量の少ないメモステを使っている方は注意してください。 ゲームだけ遊ぶとしても2GB必須、DLCも欲しいなら4GB、場合によっては8GBや16GBを用意することも視野に入れる必要がでてきます。 Q 前作やってないけど大丈夫? A 前作の内容は本作に全て含まれています。上にもあるように前作はロード時間が非常に長くおすすめできません。 むしろ前作の存在意義が、現状では有料体験版状態(コナミ・ザ・ベスト版UMD2,940円、DL2,300円と、Mk.2の約半額)。 Q 限定版があるらしいんだが A コナミスタイル専売の「特別版」と「コンプリートセット」があります。 「特別版」はアーンヴァルMk.2とストラーフMk.2のフィギュアと水着素体(アーンヴァルMk.2用)のセットです。 2体のフィギュアは、前作の特別版同梱フィギュアに武装を追加したフルアームズパッケージです。 「コンプリートセット」の方は、「特別版」にサウンドトラックCDと水着素体(ストラーフMk.2用)を加えたものです。 ただし、現在では既に入手は極めて困難です。(公式の販売は既に完売。クリスマスセールに少数再販されたが、待ち構えていたファンに瞬殺されました。中古屋やオークションなどで出品される可能性に賭けるしかありません) なお、サウンドトラックCDは単品でも購入することができます。 ※詳細はコナミスタイル・武装神姫BM2特設コーナーを参照して下さい。 Q そもそも武装神姫って何なの? A:コナミから発売されているアクションフィギュアシリーズで、ホビー方面とゲーム方面に展開しています。 MMSと呼ばれる可動素体に様々な武装を装着し、自由に組み替えて遊ぶことが基本コンセプトです。 企画発表当時はフィギュアとWindows向けオンラインゲームは連動企画の位置付けにありました。(現在はサービス終了) 神姫ネット稼働中は一部を除くフィギュアにはアクセスコードが付属し、アクセスコードをKONAMI IDに登録が可能でした。 登録すると、フィギュアと同じ素体とパーツを3Dモデルデータとして、ゲーム内でも使用することができました。 かつてゲームではショップで3Dモデルデータを買うこともでき、本作にも何点かあちらを初出とするパーツが登場します。 なお、残念ながらKONAMI IDを通じたPC向けゲーム フィギュアと本作の連動企画はありませんでした。 mobageをプラットフォームとしたBATTLE COMMUNICATIONも配信開始の2011年11月現在、本作との連動は発表されていません。(2012年5月、サービスは終了しました) 【ホビー方面】 フィギュアと武装のフルセット、ライトアーマー、EXウェポンセットなど数種のパッケージが存在します。 また、限定リペイントモデルなどもあり、デザインだけでも40種類に及ぶラインナップを誇っています。 それでいて、更に次モデルが公開されるなど、非常に息の長いシリーズとなっています。 ※詳細は武装神姫公式サイト・フィギュアの項目を参照して下さい。 【ゲーム方面】 本作のほか、mobageをプラットフォームにしたフィーチャーフォン向けの武装神姫BATTLE COMMUNICATIONが稼動中です。※2012年5月を以て、サービスを終了しました 武装神姫BATTLE COMMUNICATION ミッションをクリアし、武装や経験値を得て神姫を強化させていくソーシャルゲーム(RPG) ※詳細は武装神姫公式サイト・SNSの項目を参照して下さい。 そのほか「神姫NET」名義でWindowsPC向けオンライン専用の下記二タイトルがありました。 しかし、惜しまれながらも2011年10月31日をもって全てのサービスが終了となりました。 双方ともWindowsOSを搭載し、ある程度の3D表示性能を持ったPCとオンライン環境、KONAMI IDがあれば遊べました。 武装神姫BATTLE RONDO 神姫のAIを育成し、AI同士を戦わせることができるバトルシミュレーション 武装神姫ジオラマスタジオ 3Dモデルの神姫に自由に装備やポーズをつけて背景に設置し、バーチャルジオラマを作成できる3Dデータサービス ※詳細は武装神姫公式サイト・神姫ネットの項目を参照して下さい。 Q 登場する神姫の数は? A 天使型アーンヴァルMk.2、悪魔型ストラーフMk.2、犬型ハウリン、猫型マオチャオ HST型アーク、HMT型イーダ、火器型ゼルノグラード 戦乙女型アルトレーネ、戦乙女型アルトアイネス、忍者型フブキ 今作からの追加神姫として、 セイレーン型エウクランテ、マーメイド型イーアネイラ、サンタ型ツガル モトレーサー型エストリル、クルーザー型ジルリバーズ 以上の15体が、パッケージ(追加コンテンツなし)の状態で登場します。 + ネタばれあり さらに隠し神姫が3体あります。 武装パーツのみであれば上記の15体以外も登場します。 Q この武装何? 見た事無いんだけど A バトルロンドからの引用武装のほか、本作用にデザインされたオリジナル武装が多数登場します。 Q 俺の好きな神姫が出てないんだが? A 上記以外の神姫のうち、以下の16体がDLCで配信(販売)されています。 前作から引き続き配信 ヴァイオリン型紗羅檀、エレキギター型ベイビーラズ ケルベロス型ガブリーヌ、九尾の狐型蓮華 鷲型ラプティアス、山猫型アーティル ケンタウロス型プロキシマ、テンタクルス型マリーセレス 本作から追加配信 戦車型ムルメルティア、戦闘機型飛鳥 花型ジルダリア、種型ジュビジー 剣士型オールベルン、剣士型ジールベルン ビックバイパー型ヴェルヴィエッタ、ビックバイパー型リルビエート →詳しくはDL情報を参照。 それ以外の神姫のファンの方は・・・現状では、申し訳ありませんが、KONAMIに次回作の要望を出して気長に待つしかないでしょう。 引き継ぎ Q 引き継ぎに必要なものは? A:前作の「クリアデータ」または「エクストラニューゲームのデータ」。UMDやゲームデータは不要。 最初からやるか、そのまま続けるかを選べる。 Q 前作とどれくらい違うの? A 前作からの主な変更点参照。 バトルまわりが大幅に変更されているので、確認しておかないと思わぬところで大敗します。 Q 前作のDLCはどうやって引き継ぐの? A PSNからコンバート用のデータをDLする。 現時点では神姫素体のみ引き継ぎ可能。 A Ver1.01のパッチを当てた上で、PSNから本作用のDLCをDLすることで使用できます。 前作で購入したアイテム(神姫含め)については「無料」でDL出来るようになっています。 ※最初から購入済みになっていないことに注意してください。 ゲーム本編 Q ○○に勝てないよ! A とりあえず初心者向けページを見てみましょう。希望の対神姫戦が無ければ、現状では更新待ちです。 全体的に、前作で猛威を振るった大剣や斧が弱体化しておりCPUも多用してきた至近距離でRAを発動した時の即攻撃が無くなっているので、移動RAで急接近して密着してひたすらナックルやダブルナイフといった発生の早い武器でハメ殺すのが有効な場面が多いです。 Q ○○が装備できないんだけど?コスト制限もきついよ? A 貴方と神姫が育んだ愛が装備を可能にします。詳しくはLOVE・COST・武装ランクを見てください。 Q ○○が入荷したのに売ってないよ? A +XX(英語2文字) が名前の後ろにつくパーツはプレミアムショップ、 もしくはジャンクショップ(+IR、+GR、+KT等のピーキー武装)に入荷されます。 盲点かもしれませんが、+XXのカスタム武装以外は「いくら高ランクでも」普通のショップに入荷します。例えばシスター服、アーンヴァルやストラーフの追加武装(カローヴァ改など)が該当します。 Q △△のパーツどこ?レールアクション揃わないよ? A ゲームセンター(含むフレンドカード対戦)でも公式大会でも、 対象のパーツ(レールアクション)を持っている神姫に勝てば、 一定確率でショップに追加されます。 レールアクションは何度やっても落とさない場合、そのライバルは持っていない可能性があるので別のライバルを探しましょう。 また、各神姫のLOVE値を上げることで、その神姫の強化装備一式の入荷と固有レールアクション入手イベントがあります。専用RA装備はその神姫のクィーン杯をクリアし、累計バトル数一定数突破、専用RA入手でショップに入荷します。 さらにF1クリア後発生する様になるミミック戦では高確率で敵装備パーツの入荷が可能です。 意外な方法として、所持さえしていれば、 ヴァルハラにて該当装備のみをした状態で敗北することによって、装備は失いますが該当パーツがショップに入荷されます。 なお、+KTのピーキー武装は、シナリオ後半に発生する武装制限杯(「ミサイル+Pバンカー」等、互いに+アビリティのある組み合わせの大会)の景品になっています。片方は確実入手。もう一方は確率入手です。 Q 手持ちのパーツが少なくて同時育成が難しいです。 A パーツは1個でも所持していれば全神姫に装備させることができます。 複数個所持の利点はヴァルハラで敗北した時に武装エディットの消失が防げるぐらいです。 Q 武装エディットの登録データが消えるんだけど? A ショップでの売却とヴァルハラでの敗北により武装の所持数をゼロにした場合、その武装を含む武装エディットのデータも消失します。 Q 武装エディットで総合アビリティ一覧があったら便利なのに。 A あります。装備エディット中はいつでも△ボタンでその時点での 装備武装・アビリティ・レールアクションが閲覧可能(△押して画面変更) です。 なお、装備選択中にR or Lボタンで各装備の解説及び能力閲覧となります。 Q 一回しか攻撃できない武器があるんだけど。 A +IR、+GRの格闘武器は二段目以降特定のタイミングでボタンを押していかないと攻撃を続けられないように出来ており、通常武器のように連打ではコンボはおろか攻撃を出すことすら出来ません。 諦めるか、トレーニングで練習しましょう。 Q ハンディキャップ戦が難しすぎる。 A その場合、基本はLOVEを上げて装備を新調してから再戦しましょう。戦わないと一定期間で消える場合があるので 勝てないと思っても取り合えず戦っておきましょう。初心者向けページを参考にしてください。 Q LOVE上げの効率のいいところはどこ? A F3ならリリス、F2ならタッグバトル、ゴスロリ装備を持っているならアリス・リデル杯等です。 ライドレシオMAXでボーナスがあるため、CHAなど装備や戦い方を意識しましょう。 レシオMAXが容易な発射数の多いビットを持って行くと楽ができます。 LOVE15以上ならコスプレ大会でガトリング主体で戦えば1試合につき900~1000、 ゲームセンターの閃光魔女&シャイナを相手にCHR重視装備+ガトリング主体で普通に勝つだけで1000~1300稼ぐことができます。 また、フレンドカード交換の出来る環境なら、LOVE上げ用アセンのカードを貰ったりすると楽が出来ます。 さらに、今作では一度クリアすることによって、経験値の量を大幅に高めるアクセサリーを入手することが出来ます。 従って、一度最後までクリアするのもよい手段になります。 Q F1行くための公式戦でないんだけど?/ファイアーバースト杯出ないんだけど? A 狙撃スター・タッグマッチを攻略してください。 とりあえずゲーセンを適当に倒すと①~④の予選が出ます。 その後、タッグマッチと狙撃タッグを終わらせると狙撃スターが出て、 さらにスターライン杯をやるとファイアバースト杯が出ます。 その時点で一旦ヴァルハラ行くとF1出場権獲得予選が出ます。 Q クラブ ヴァルハラ?裏バトル?やっていいの? A 「敗者の武装が、勝者の賞品となります。積極的に奪い取り、武装強化を目指しましょう。」 ロード中のTIPSでこう語られている通り、シナリオ進行に悪影響を与えることはありません。 と言うよりも、ストーリー進行フラグ(F1制限予選開催など)を立てるため、最低2度は行く必要があります。 強力な武装や、各神姫の固有レールアクションを賞品にしてくれるオーナーもいるので、 上記の通り自分の武装が奪われることを承知のうえ、腕に自信があるならどうぞ。 さらに、奪われた装備はショップにない場合入荷されるため、ショップの商品リストを埋めるのにも非常に便利です。 Q ランク5以降の装備はどこで集めればいいの? A クリア前ならヴァルハラかF1で頑張ってください。 F0クリア後はヴァルハラと公式大会にランク5以上の装備持ちが大量に出てくるので、それで稼げます。 最終的にはクリア後の新F0やミミック戦で集めるといいでしょう。 完勝してSを取ると確率が上がるという都市伝説もあります。 また、神姫固有RAに必要な装備は特に収集せずとも 対象神姫のLOVE値+対象神姫限定公式大会クリアの条件で プレミアムショップで販売が開始されるようです。 Q:逆に低ランク武装が手に入らないんだけど… A シナリオの進行に伴って、神姫の武装ランクが変更される対戦相手が複数組存在します。過去に対戦済み(マイルームでライバル名と使用神姫名参照可能)であるのに、ゲームセンターの対戦相手選択欄で「NEW」と表示される場合、武装のランクが変更されています(この時点で、変更前の武装はその対戦相手からは入手出来なくなります)。また、余談ですがこういった対戦相手は、内部データでは別人扱いとなっているらしく、某称号の入手に影響を及ぼします。こういった対戦相手から武装を手に入れ忘れた場合は一度メインシナリオをクリアして次周回にて再戦する、又は今作追加メインシナリオ部分で対戦可能なミミックに勝利することで入手が可能なものがあります。 ミミックから入手する場合の注意点として、 ①ミミックの武装はプレイヤーの「最後に選択した神姫」の武装ランクによって抽選テーブルが変動する(装備しているランクではなく、装備可能上限のランク) ②「最後に選択した神姫」とは、ミミック出現判定に入る直前にバトル、武装の変更、名前やカラー変更のいずれかを選択した神姫のことを指す ③ミミックとの遭遇は基本的にランダム。各武装ランク毎にミミックの武装にパターンが複数ある為、狙った武装セットのミミックが出現するとは限らない。 ④使用神姫がミミック、強化ミミック、ジャスティスの場合は、武装ランクにかかわらず、武装ランク7の強化ミミック(武装パターン1種類のみ、他神姫ではLOVE31以上の場合に抽選テーブルに追加されるようだ)が出現する という点が挙げられます。 また、ごく一部の武装ですが各神姫のイベント対戦相手が所持していたり、DLC神姫のシナリオ対戦相手や専用大会からのみ入手可能なものもあります。 Q アストライアー(二戦目)が倒せない! A 所詮CPUなので、開幕に走りこんでナックルやダブルナイフ連打だけでハメ殺すこともできます。 マメ知識・仕様のラスボス戦の項目を参照にするのもよいでしょう。 Q 称号「闘神の玉座Mk2」の入手方法は? A 攻略チャートと称号に入手方法が載っています。 バトル以外 Q イベントが進まないんだけど。 A ハウリン等、神姫によっては最後にイベントが固まっているので、LOVE17あたりまで進行が遅くても安心してください。 また、自宅を始めとして特定の場所への移動や、対象の神姫を用いてゲーセンバトルに勝つことが条件のこともあります。「ゲーセン等の施設へ移動する」「施設でのバトルを行い勝利する」のどちらかがキーの場合がほとんどです。 Q 同型の神姫って複数持てない?何か駄目とか言われたよ。 A それぞれの神姫で全Loveイベント制覇で2体以上持てるようになります。2体以上所持でイベントリセットすると、「イベントを発生させる神姫はどちらか」と選択肢が出ます。 Q 神姫の名前変えたいんだけど。 / 武器や神姫の色って変更できない? A 自宅の神姫データで□ボタンを押すと変更できます。武器の色は変えられません。 Q 神姫とのイベント回想はないの? A 自宅でスタート- イベントログ- 対象神姫で△、でもう一度その神姫のイベントを始めからやり直すことが出来ます。 一部イベント戦闘関連称号の入手などにも。 Q 神姫って何体まで買えるの? A:購入できる神姫の最大数は同型を含めて全部で98体です。 前作の29体より大幅に増えました。 98体所持して更に買おうとすると、これ以上所持できないという表示がでます。 ただし強制入手のフブキはこの制限外なので理論上の所持数限界は99体になります。 (98体所持状態でフブキ入手イベントをこなす) なお、称号は特にないようです。 Q ライバルが上級者すぎるんだけど…。 A 世の中には色々な紳士がいます。CERO Bですから大丈夫です。 Q 主人公って男性なの? A 残念ながらストーリーは男性固定です。 オーナーカードで女性のシルエットを選択できるので、次回作まではそれで我慢しましょう。 神姫のイベントによっては百合展開と無理やり解釈する事も不可能ではないかも。 Q 神姫が増えてくると名前をつけるのが大変なんだけど…。 A ネット上には名前辞典や命名ジェネレーターを設置したサイトが存在しますので参照してみてはいかがでしょうか。 Q 攻略本って…どう? A コンプリートガイドを参照。 攻略本で扱っているデータはこのwikiでも扱っているものも多いですが、 wikiはあくまでも善意の編集によるものです。現在データ量でいえば本の方が充実しています。 また、こちらでは検証が難しいパーツなどの入手確率の数値のようなデータも載っています。 数値がわかったから入手しやすくなるわけでもないですが…心情的には違うでしょう。 加えて、攻略本には大剣「ギュリーノス・ダーク」が付いてくるのと、各神姫の立ち絵集などが載っています。 ただし、当然ですが、バグやパッチ、DLC等の最新情報の収集については、wikiが圧倒的に有利です。 うまく使い分けてください。 対戦関連 Q アドパで対戦できる?kaiは? A kaiはSSIDを変更する必要はありますができるようです。 アドパもできるようです。 専用のスレもあるので確認してください。【PSP】武装神姫_BATTLE_MASTERS Kai&アドパスレ